【これからのこと】

──次、さらに続きってのが。有川さんは考えられて?
有:今書いているところですね。
──これもプロットを書いて?
有:プロットは出したというか。あれをプロットって読んでいいのかなっていう感じなんですけど。三十行くらいぺろっと書いて送って。これがプロットってふざけんなって感じなんだけど通ってしまった。担当さんの度量が広いんで助かってます。
──また今回提出は?
有:ていうか、『塩の街』で陸自が出て、次が空自だったんで、最後※海自を書こうかなって。
(会場湧く)
──自分の萌えを追及しようと。
有:わたしは船はそれほど萌えじゃないんで。あの、それほど萌えじゃないんで飛行機が萌えなんで。ちょっと今苦労してます。(悩むように)わからない、船の萌えがわからない。飛行機ならもういっくらでも萌えられるんですけど。
長:空母とか。
有:あっ、そうですね。艦載機コミで萌えられる。
──なんといっても、やっぱり飛行機が出るんですよね。
有:飛行機は……ちょっとどうなんだろう? まあなんか、ちょっとまた『空の中』とはちょっとテイストの違ったものにしようと。もう自衛隊推薦図書にしてくれって感じで。
──なるんかな……。内容的にSFですか?
有:ていうか、なんなんでしょうね。また何か、わけのわからないホラを一つ書こうと思っています。ベタなホラを一つ。で、1作目2作目とはまた違う引き出しを開けてみようかなと。
──長谷さんは、※フリーダの続きは? 非常に気になっているんですけど。
長:フリーダの続きは、本当にもうどうしようっていう感じなので。いやまさにみなさん買ってくださいっていう。ちょっとね商業的には少し厳しめな感じなので。状況が変わるとあれなんですけど、別の作品も合わせてフリーダを出せる状況にもっていけるようにしないと。
──そのために萌えを書こうと?
長:今まさに萌え書いている最中なんですけどね。ちょうどで※PreProっていうのがあって、応募者にイラスト応募してもらって、それで短編小説を載せようじゃないかっていうイラスト募集企画みたいなのがあって、今ちょうど萌えを書こうじゃないかって、やってる最中ですよ。
──チャレンジ?
長:チャレンジしている最中ですよ。なんていいますか、※編集さんに打ち合わせで、
「小学校教師と小学生の恋愛ものってないですよね?」とか、そんなこと言ってたら、
「みんなそこを思いつかなかったんじゃなくて、避けてたんじゃぼけえ!」と。
「お前はマイノリティーなんだよ。このペド野郎!」って感じで。

──書いてはいけないヤツを。
長:って奴をそういう流れでまさに書いているところで、※前半載せちゃったところなんですよね。
──書いたの?
長:前半もう載っちゃいました。後半というか完全版は12月末号の『ザ・スニーカー』に載ります。いかにこれをペドじゃないとわかってもらいつつ、微妙な関係を楽しんでもらうかっていう。
──純粋な恋愛を残して。
長:恋愛だって強く出過ぎると読者さんが引いちゃいそうで、いけないっていう。
──恋愛じゃいけない?
長:てか、主眼がここんところの主人公とヒロインとの、微妙な関係にあるっていうことが表に出すぎちゃいけないって。ライトノベルの中高生読者層にロリコンは普及しないんだよこの馬鹿野郎、っていう感じのお叱りを受けようとしてるところでございます。
──フリーダの続きの構想自体はあるんですか?
長:あります。プロットはあります。プロットはもうできてるんですよ。
──じゃあもっと楽園とかのくれたワールドっぽく。
長:流れの最後の方でそっちのほうに行くんですよ実は。もろに繋がる話が実はあるんですけど、止まってます。まあきっとそのうち。僕自身の方に書く意志はあるんで、状況が変わればという感じです。そのへんはまさに。
──あと、伺うのならやっぱり恋愛観も伺いたいなと。
長:痛え……痛え……。どうしてロリコン流れでその話題に来るんですか。
有:すごいアクロバティックですね。
──有川さんの方は、『空の中』で※だいぶ恋愛モノを描いているんですけど。
有:後でやばって思ったんですけど。自分で校正とかしていて著者校とか入れていてなんか、結構恥ずかしかったかなって。やば、これはわたしが恥ずかしいからやばいって。でもなんか旦那とかに読ませたら、「いやそんなことない大丈夫大丈夫」とか言うから信じて。……やっぱりえらい恥ずかしかったです。
──どっちがはずかしかったですか。高校生方?
有:すみません大人側が。
長:大人側が。
有:高校生はもうわたし年代が離れすぎちゃってるのでわりと冷静に見れるっていうか。
──他人事みたいに。劇みたく青春してるとかってそういう感じで。
長:おとなの男に転がされていくような、恋愛が。
──じゃあ彼みたいなのがタイプとかっていうことで。
有:何て言うんでしょうか。立派な大人になりたいなっていうあれがあって、自分がこんな風にになれたら良いなっていうところがあって。そういうのを書いて。
──『塩の街』でもやっぱり二人の出会いっていうところがあるんですけど、これは恋愛モノをいれていこうというのがあって? 人間のドラマとしてそうして?
有:恋愛モノ大好きなんで。基本的に。大前提として。
──基本的には。
有:なんか、基本的に書かずにはすまさないっていう。
──ここは絶対入ってくるところですね。
有:そうですね。
──長谷さんは?
長:やもう。まさに一番初めに断っとかないといけないんですけど、僕はロリコンではありません。これだけは大っきく主張しとかなきゃいけないんですけど、僕のストライクゾーンは十歳前後じゃありません。
──でも※『楽園』を書いた人がそんなこと言っても、説得力とか無いですよ。
長:そのへんはあれですよ。ほら、十五・六歳とかになると、野郎二人と少女一人の構図が、生々しくなってるじゃないですか。
──ああ。
長:ひたすら生々しくなりたくなかったので、あのころぼくは人間や現実を見たくなかったんであんまり。ひたすら、なんて言いましょうか……。ちっちゃい子供にしてみれば余計なイメージなんでしょうけど。あんまり生々しくない感じにしたくて。
──子供っていう感じで
長:そのぐらいの年齢設定にしちゃったんで。楽園の場合はまさに。いや本当に実際のとこ、※挿し絵のところがちょうど十歳の子供がお風呂に入るところだったんで、
「それをやりたかったんだろ?」って友達に聞かれて、とりあえず、
「思ってもそんなことは本人の前で言うな」って返しておいたんですけど。

──本当の所はどうなんですか?
長:本当の所は。いや、でもまあなんとなくね、書いていて結局はえっちくなきゃいけないっていうのがあったんですね。なんかあるじゃないですか? ※ジェイムズ・ティプトリー・Jrとか結構好きなんですけど。カマキリにすらセックスを持ち込むのかよっていう感じの。もう書かずにいられないっていう感じの。
──うん。
長:こうね、やっぱりSFはえっちい話がやっぱ楽しいですよ?
──楽園はそんな別にえっちではないとは思うんですけど。
長:どっかになんかえっちい話を入れとかないと僕がSF読むときイヤなんですよ。こんなえっちいところ出てくる意味あんのかなって思いつつも、えっちいところ出てくるじゃないですか。それでやっぱりえっちいところにひっかかるわけじゃないですか。
──私はむしろあの……、※楽園は男同士ですよね。
長:ええ。男の話ですね。
──※フリーダは女同士だし。
長:女の子同士ですね。ええ。
──そっちなのかなって
長:なんていうか……僕はロリコンでホモでレズですか?
──すごい男女のカップルを出さないのは何故?
長:普通の男女のカップルは出してもいいんですけど、フリーダの場合は男女のカップルでやる話じゃないなって。けっこうシビアな話をしてまして、恋愛感情に逃がしたくなかったんで。「お前は俺のこと認められるの認められへんの?」って命を懸けようかって話に、恋愛感情挟みたくなかったんで、全体として。そうなるとやっぱり、そうなっちゃうよねって。女の子同士になっちゃうねって。まあ画面的にも華やかですし、それはそれで別に嫌いでも無いしっていう。
──じゃ友情の方を、いや友情というか二人の顔を描くときに、男女だと差がありすぎちゃうとかで?
長:男女にするとね。僕自身が男女自身に萌え萌えしすぎちゃうっていう。結局フリーダにしても楽園にしても、書きたいことが先にばーんとあって、それに対して話を収束していこうっていう話だったんで。やっばり恋愛どこにいれるかっていうのがわかんなくって。まあ未熟な男でございますので、成熟した人妻の隣でアレですけど。(と、有川さんを持ち上げ)
──持ってかない。次には恋愛に持っていって下さいよ。
長:いやでもね、恋愛って言ってる最中に書いているものが、小学生と小学校教師って。まずいよな俺。
──次が出たら完璧にこういうことで。もう書いてしまいましたが。
長:や、もうまずいですよ。まさに親戚にどう見せるんだよ、親にどう見せるんだよっていうことをまったく考えてなかったから。や、大丈夫ですよ? いや、本当に大丈夫ですよ? いやもう、もう普通に年賀状に子供の写真つけて送ってきてくださっても大丈夫なんで。その辺はお気になさらず。
──有川さんは自衛隊以外で挑戦したいことは?
有:ええとですね。なんか、別に自衛隊が書きたくて書いてるわけじゃないんですよ? やっぱり一番動かしやすいじゃないですか。なんていうか、現実に怪獣出てきたら自衛隊だよねって。
長:陸自とかって、体育会系でいいヤツとかって感じで書いてますよね。
有:なんていうか義務を果たす人達はかっこいいっていうあれがあって。いろいろ言われるけど、あの人たちの大半は義務を果たそうとしているんだろうなあ、って。
長:働く男はかっこいいっていうガテン系のかっこよさですよね、有川さんのかかれる自衛隊っていうのは。めちゃくちゃガテン系ですよね。
有:体育会系なのかな。考えたら。
長:やっぱりね。
有:けんかっぱやいし……
長:自衛隊はやっぱりアレですよ。健全に自衛隊を軍隊として書いているっていうか、軍隊っぽい所がどうしても出てきちゃうところを書いてるなって。僕の連れも一人、陸自学校とかに入った奴がいるんですけど。そいつがなんか、風呂があほみたいにせまくて、こんなところにものすごい人数が入るっていう嫌悪感で、陸自学校すぐにやめたっていう男が一人いるんですが。それを聞いただけでも、自衛隊はすごい男社会だなあって。やっぱり男社会を男社会として書いているのがすごいなあって。やっぱここは萌えどころなんだなあって。
有:いや別に萌えとかそういうのでは……とか言っても空々しいですか。
──現実に近いところにあるっていう感じで。もっとなんかこうぶっ飛んだ話とか。このへん地上が舞台じゃないような感じで宇宙とか。そういうのは?
有:重力がなくなっちゃうと、わたし処理できなくなっちゃうんで。基本的に頭が悪いものですから。わたしに理解できる範囲じゃないと書けないっていう。
──まあ、じゃあ地に足がついた状態で?
有:今のところはそうですね。基本的になんか普通の人が思いつくような些細なことを、なんかちょっと横滑りさせて書いているぐらいな感じなので。わたしは別に科学とか詳しいわけではない普通のおばちゃんなんで、普通の人が思いついた突飛なことをもっともらしく書いているという感じで。突飛な思いつきを大人のアンテナに引っかけて、真面目に処理して書きたいかなという感じですね。
【最後にひとこと】

──最後にそれから読者層。ライトノベルの読者層も変わっていくと思うんですけど。まあSFの読者層はあんまり変わらないんで。※どんどん年老いていくんですけど(会場苦笑)
──どちらにでもいいんですが、読者に一言。
長:やっぱりSF読んでて一番思うのは、古い作品が強い。面白いんですよね。古い作品がすごい面白いんですよ。それが今の作家としてはすごい悔しいところで。本当の話、60年代のとか70年代の話とか80年代とかはむちゃくちゃふつうに面白いんです。90年代の話とかだってもう、ライトノベルで10年前の話っていったら古さを感じるのに、SFはそんなに古さを感じずに、普通に面白く読んでるっていう。やっぱり古いのが面白いのはわかるんですけど、新しいとこもたくさん読んできて欲しいって。いや本当に。一番SFやっててすごい怖いなっていうのは、やっぱり古い作品が面白いっていう所ですかね。
──そういう。
長:古い作品がいろんなこと面白い事をやっちゃってて、これに対してどうやって切り込んでいくのよっていうふうに考えると、けっこう来るモノがあるんで。まあ新しい作家は新しい作家なりに頑張っていくんで、みなさんよろしくおねがいします。本当に。
──有川さんは?
有:すいません。あの、SFの畑じゃないものですから、ライトノベルの観点の方になってしまうんですけれど。うーん、ライトノベルとかの読者層っていうのは広がってきていると思うんですよね。最初の世代の人達が三十過ぎてて、これからどんどん広がっていくと思うんで。ライトノベルの出版社各社、結構いろいろ試みて仕掛けてくると思うんですけども、あんまり※ハードカバーで出す意味はあるのか? とか聞かないで頂けると。(苦笑気味)
有:やっぱりなんていうか。新しいことを出版社が始めようとすると否定的なイメージになる人がおられるようで、出来ればライトノベルの未来自体を長い目で見てくださると。出版社の側も新たな展開を模索して、ライトノベルの可能性を広げようとしてると思うんで。そこを見守っていて頂けるとありがたいかなって。一般書とライトノベルというふうに分かれたのが、境界が曖昧になってくる時期がたぶんそのうち来て、そこから活字の世界が変わってくると思うんですよ。あまりジャンルとかそういうのに囚われないで、自由に読者も作者も活字の世界でやっていけたらって。
──ありがとうございました。
【最後に、質疑応答】

──えっと、質疑応答してる時間ってありますか? ある? なんか質問ある人ー。
A:長谷さんに質問があるんですけど、SFマガジンで一本書かれましたよね? アイディア、※『地には豊饒』のITPとかっておもしろいって思ったんですが、ああいう方面で書くというのは無いんでしょうか?
長:いや、一応あるはあるんですけど……。あります実は。いや、そんなに具体的に進んでるとか、具体的なことは言えないんですけど。
──構想とかは。
長:構想は一応あるんですよ。
──あとは塩澤さんとかに。
A:※塩澤編集長がよければ?
──説得すればいいのかな。
A:期待してます。
──他に?
(大森望さん手を上げる。周り苦笑し、他の質問者はいないものかと見渡すがおらず。仕方なく大森さんに)
大森:有川さんに質問なんですけど。さっきガメラのレギオンの話が出ましたけど、(空の中を)読んでて、思い出したのはウルトラQとかバルンガとか。(『空の中』の作中に)※スカイドンとか出てきて世代的にどうなのよ、この人40代か? と思ったら30代だったので。特撮はどの辺からごらんになっていて、どの辺が血となり肉になっているのかを伺いたいんですね。
有:実はあんまり……すみません、さすがにウルトラマンをちゃんと憶えているか、と言われたら憶えてないんですよ。ウルトラマン80とかを50年くらいの時にやっていたのを覚えてるかなあと。ただなんていうかな、とにかく怪獣好きだったんですよね。怪獣好きだったら普通にウルトラマンとかの怪獣が出てきちゃうんですけど。本編を知らずに怪獣だけ愛でるみたいな。でもルーツというと、すごい新しいんですけど、※平成ガメラから入って、「うわ怪獣モノって面白かったんだ」って再発見して新規参入してきた感じですね。
大森:ありがとうございました。
──他には?
B:長谷さんに質問なんですけれども。先ほどテーブルトークの話があって、ソーサリーとか今再版されてまた発売されていますけど、ああいう系統のものをやってみたいなあというのは? ゲームブックではなくてゲーム的なファンタジーを書いてみたいということは?
長:ゲームブック的なファンタジー?
B:例えばソーサリーとかそういう世界で書いてみたいなあということは?
長:僕の書き方っていうのは。どうなんでしょうファンタジーとか書いてみたことないんですよ。やってみないとわからないっていう世界なんで。ちょうど最近、※『すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた』とか読んで「ファンタジーおもしれえ」とか思ってたんですけど、やっぱりこれも向き不向きがあってやってみないとわからないですね。本当にやってみないとわからないという感じで。いまのところ話はきてないですけど。


2004.11/20──京都大学法学部 吉田キャンパスの講義室にて


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