悪魔のミカタ 10 It/スタンドバイ
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8、9巻を読んだ時点では先行きにかなり不安があったのですが、この10巻の短編「キングダム」を読んで納得しました。 知識の集積体が知恵を求めること、知恵の実と悪魔こそが人間を賢くさせるのではないかということ、そして知恵という禁断の果実を得た人間は楽園を追われてどこへいくのか・・・目新しいものではないのですが、こういうテーマ大好きです。 この巻でこれまでのテーマを要約し、次巻からの「ザ・ワン」のエピソードではその方向性で突っ走っています。個人的には、この10巻が大きな転換点だったと思います。 |
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魔術士オーフェン 無謀編13 これで終わりと思うなよ!
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ライトノベル好きでオーフェンを読んでいない人はなかなかいらっしゃらないと思いますが、読んでいない方には今からでも読んで頂きたいです。 書き下ろし本編のシリアスさに対して、雑誌に連載されたこの無謀編の意味の無さと馬鹿馬鹿しさ、この落差が強烈です。 本来は無謀編は同人でやるべきような内容なのですが、それを商業作品でやってしまったことで禁断のパンドラの箱を開けてしまったと言って良いでしょう。 このスタイルの先駆はスレイヤーズでありましたが、 より洗練し、(アニメやコミックではなくライトノベルとして)富士見ファンタジア文庫とドラゴンマガジンの絶頂期を演出したのはオーフェンであったと思います。 その栄光はもう過去のものとなりましたが、オーフェンを外してこれまでの少年向けライトノベルを語ることは私にはできません。 オーフェンの完結は一つの時代が完全に終わったことを示すものでした。 |
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天高く、雲は流れ14
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もし5年後も10年後も同じ本、同じ作者を読んでいたいとおっしゃるのであれば冴木忍をお薦め致します。 大丈夫。私は10年前からこの作者を読んでいますが、刊行ペースが落ちたこと以外は何も変わりません。 流行を追っているうちに流行に呑まれてしまった方、自分は何が読みたかったのか思い出せなくなってしまった方は手にとって見て下さい。 いつもやさしく切ないハートフルファンタジーが、自分が存在するただそれだけのことを受け入れてくれる世界がここにあります。 |
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カラミティナイト 3
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後向きの心理と、誤解が誤解を生むストーリーが笑いと涙を誘う青春学園ものです。ファンタジーとしてはちょっと疑問符が付くのですが、もの凄い迫力の心理描写に圧倒されてしまいました。衝撃的です。 シリーズ打ち切りというのが残念でなりません。本屋で見つけたら是非是非保護してやってください。このまま埋もれてしまうには余りに惜しい力作です。
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レディ・ガンナーと宝石泥棒
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この第4巻の出来は正直申し上げるとあまり良くないのですが、シリーズとして好きなので投票します。 はっきり言って地味です。茅田砂胡さんの作品では最も地味でしょう。でも、こじんまりとまとまった世界観と控えめなストーリー、メリハリのあるキャラクターは、この作者さんのメッセージをよく引き出していると思います。 強烈なキャラや流行ものを追求される方にはあまりお薦めできませんが、物語をじっくり楽しみたい方はお試しあれ。 |
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ネザーワールド カナリア
(イラスト評)
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唖采弦二さん、個人的には輪くすさがさんというお名前のほうがなじみがあるのですが、この人のイラストには1枚ごとに物語が想像できそうなストーリー性があります。骨董趣味な背景は、少々パースが歪んでいますが、単なる背景というより生き物のような有機的な雰囲気を持っています。キャラクターは目の前の現実に疲れながらも、その視線はもっと遠くを見つめています。まるでキャラクターと背景世界が対話しているような、魅力的なイラストです。 |
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Missing 8 生贄の物語
(イラスト評)
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プロの作品というのは本来、他人から簡単に真似されるレベルのものであるべきでないと思います。でもライトノベルの場合、そこがとても甘いですよね。だからこそライトノベルなのかも知れませんけれども・・・。 翠川しんさんのイラストには流行とは関係ない、この人だけの世界があります。そっくり真似できる人はなかなかいないでしょう。今の流行が変わっても、たとえライトノベルがつぶれても、翠川しんさんはイラストレーターとして生き残っていける可能性を持っている人です。
ただ、顔を下から見上げる、いわゆる「アオリ」の構図が苦手なのが気になります。もっとデッサンを大切にして欲しいです。アニメ顔というのは人を描くための技法・記号であって、アニメ顔であるために人としての造型が崩れるというのは本末転倒です。そうでしょう? |
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リバーズ・エンド 5 Change the world
(イラスト評)
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緑の髪に赤い影を持ってきたときは「やられたぁ」と思いました。
グラフィックやデザインをやられている方はご存知でしょうが、色というのは明度(明るいか暗いか)、彩度(鮮やかか濁っているか)、色相(赤、緑、青がどれだけ合わさっているか)の3つのパラメータで表わされます。このうち明度の変化を色相に置きかえる技法を色彩分割と言います。つまり本当は暗い茶色の髪を、光の当る明るいところは緑に、影の部分は赤に置きかえるんですね。こうすると色相のバランスを取りながら明度を自由に設定できる、つまり普通に描くのではあり得ない明るいイラストが描けるのです。 この技法は今から150年も前に考案されたものですし、ライトノベルのイラストで最初に使ったのが高野音彦さんかどうかも分かりません。でも緑と赤、黄色と紫を対比させたイラストは儚く印象的でした。 |
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イリヤの空、UFOの夏 その4
(イラスト評)
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イラストというよりレイアウト、デザインへの評価になりますが、このシリーズのイラストの使い方は素晴らしいです。 貴方がイラストに魅力を感じてライトノベルを読むなら、一般的に単行本より雑誌をお薦めします。雑誌の方が文章に対してイラストの比率が高く、レイアウトも自由が利いてグラフィック的に楽しめるからです。
けれども「イリヤの空、UFOの夏」は雑誌掲載時よりも単行本の方がずっと良かったですね。「こつえー」こと駒都えーじさんのイラストを抑えて使うことで、切なさをうまく引き出していたと思います。「バシバシと量を入れるだけがライトノベルの萌えイラストの使い方じゃないんだぜ!」と言ってくれた作品でありました。 雑誌掲載時にはイリヤの水着姿や、はなぢブー!な挿し絵があっただなんて、単行本を読んだ後に信じられますか、奥さん!? |
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まじしゃんず・あかでみい 4 聖夜暴走!?
(イラスト評)
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BLADEさんのイラストの素晴らしさは、あれだけ強くデフォルメされていながら、関節がちゃんと曲がって、重心が正確な位置にあることです。単にみてくれの可愛らしさだけを真似てもあの絵は描けません。デッサンを地道に練習し人体について深く理解した成果でしょう。 デフォルメの方向性はよくある流行のものなのですが、基本がしっかりしているので色々応用が利く人だと思います。 |
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