よくわかる現代魔法
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総合的にいって、とても面白かったです。 主人公、こよみちゃんは「あの、あの」で「ずるぺたーん!」なドジっ子。「魔法使いTai!」の主人公はいってます。 そのキャラで、しかも最後までそのまんまで、シリアスシーンになったとたん別人になったりせずに、古橋秀之か士郎正宗かというシリアスな筋に斬り込んで、成長物としてまとめあげました。驚くべき完成度です。 読みながら、何度「おおー!」と口走った事でしょう。 美鎖先生の眼鏡っぷりもよかったし。きっと作者は眼鏡っ娘を深く愛してるに違いありません。スーパーダッシュを富士見ミステリに継ぐ眼鏡帝国と化すため頑張って下さい。 実はかなり文章も巧みです。 ライトノベルとはこうやって書くものだ、というお手本のような作品。
しかし帯に書いてある「アキバ系魔法使い登場!」というコピーは誤解を招きますね。 背中からエロゲーのポスター出してる魔法使いかと思っちゃいます。(そんなの誰が読むか) |
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ウィザーズ・ブレイン IV 世界樹の街<下>
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はじめてSFを読んだ時の感動をおぼえていますか? 宇宙船、ロボット、パラレルワールド、サイボーグ、超能力、電脳空間……そんな小道具に触れた瞬間のドキドキを? アイディアひとつで世界の見え方ががらりとかわってしまう衝撃にふるえた、あのひとときを? ウィザーズ・ブレインがあたえてくれるのは、まさにその感動です。この作品にはSFの根源的な生命力があふれています。ここ数年を代表しうる偉大なSFであり、そしてSFというジャンルの入門書でもあります。 ほんとうはシリーズ全体をほめたいのですが、今回は最新刊であるこの一冊をとりあげます。
「極限まで発達したコンピュータは、その演算能力によって世界を書き換えることができる。できる人々のことを魔法師と呼ぶ。」 この一つの設定が、文章でしか表現できないかっこよさで描かれ物語。 「魔法」の力をもった、あまりに純粋な少年少女達が、愛のため、夢のため、信じるもののために刃をかわす物語。 ふつうならクサいと思ってしまうような展開もあります。 この作品でしか描けない「世界描写」。知性を刺激する「戦闘描写」。とてつもない科学解釈のアクロバットを平然とやってのけるハッタリパワー。この三つが読者の心をゆさぶって、心の防壁を解除してくれます。 だから、泣けるのです。 そう、この本を読んでいるあいだ、あなたは12歳の少年になります。
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平井骸惚此中ニ有リ
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オヤこの奇態な文は何たる事かと皆様がたはお思いかもしれませんが。 「平井骸惚」を読まれた方には一目瞭然、文体模写。 其れというのも本作品に強い感銘を受けたが故という次第で。 本作品を一読してまず感じた事は「世界の空気」が在ると云う一点でございまして。 ハテと首を傾げる読者諸兄、其の通り、更なる説明が必要かと。 一言で申しますと作品世界が物語の外に広がって見える、ということに尽きましょう。 大正年間を舞台にしたこの探偵小説は、さほど背景の世界を説明してはおりません。 しかし乍ら見えるのございます。主人公達の生きている「大正の世」が。 其れは軽快でありながら独特の風格漂う文体故か、はたまたキャラクタア達の台詞一言に至るまで込められた考察故か。 まあ理由はさておき、「大正の世に行った気になれる」本でございまして。 ストオリイの魅力もございますとも。マアこちらは王道と云えば王道、意外性や深みをお求めの読者諸兄には些か物足りないかと。 とは言え、テムポよく、引き込まれ、ホホウ成程と言わせる、娯楽として必要十分の物語性で。 更に申しますと、この作品は富士見ミステリイ文庫。「L・O・V・E!」なる奇ッ怪至極なモットオを掲げる探偵文庫で。当世風の「萌へキャラ」も用意され、サアビスの点でも抜かりはございません。 この完成度を讃えることには些かの躊躇いもございませんが、何とも残念なのが「すべからく」という言葉の誤用でございまして。 ただ一つのミステイクで高度な知性を持つ筈の人物が知ったかぶりの粗忽者に見えてしまい。 尤も、作中の骸惚先生なら以下の如く仰り、批判を一笑に付すことは確実で。 「誤用が誤用であるのは少数派であるからに過ぎないのだがね。数限りなく繰り返され多数派となれば誤用こそが正しい意味に変わる。丁度『確信犯』という言葉の意味が変わってしまったようにね」 まあ全体として、お薦めできることは確かでございまして。 |
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アニレオン! 3 超科学者はお年頃
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ライトノベル界屈指の「引き出しの多い作家」葛西伸哉。 超能力SF「熱死戦線ビットウォーズ」 SF風味の学園青春ドラマ「石のハートのアクトレス」「青の時代のスタンド・イン」 パロディ風異世界ファンタジー「ようこそ観光ダンジョンへ」 和風歴史ファンタジー「小次郎破妖録 エクスカリバー武芸帳」 レトロ風味ロボット物「バギーラギーで出かけよう!」 商業ネタ異世界戦記ロマン「エシィール黄金期」 一作ごとにジャンルを変え、挑戦を続けて来た葛西伸哉の、「もっともとんがった」作品がこの「アニレオン!」です。 マッドサイエンティストの美少女妹が暴走し、オタクの妄想をひとひねりして実体化させたような侵略者がせめてくる。平凡な少年が改造され、トホホと泣き笑いしながら悪と戦う。 たたみかけるようなギャグ展開、オタクの文化に深い愛を注いでいるからできるぶっとび設定。 でも、その根底にあるのは、驚くほどの純愛です。 笑って笑って、どもちょっとしんみり。 バランスの非常にとれた傑作です。 とくにこの3巻は、眼鏡っ娘萌えにとってバイブルといえましょう。 |
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吉永さん家のガーゴイル
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「えんため大賞」受賞作です。なるほどこれは賞をとるだろう、と納得できる、可能性に溢れた作品です。 荒っぽい妹、美少女みたいな兄、マイペースすぎる母など、おかしな一家。 そこに「門番」として犬みたいな石像がやってきます。 石像の名はガーゴイル。無敵に強くて優しいですが、人間社会の常識はいま一つ。 涙あり笑いあり、というのはまさしくこの小説のことです。 ギャグ的に誇張された人物が漫才をやりながらストーリーを進行させます。テンポの良さが絶妙で、笑えます。でも話全体としては、泣けます。ええ。けなげすぎて泣けてしまう、という感じです。 とくに、エイバリー少尉という盲導犬のエピソードは涙なくして読めません。 基本に忠実なようでいて、しかし「ありがち感」はなし。まさしく大型新人です。 |
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