最近の審査員奨励賞を読んでいて、なんとなく考えたネタ。ただし、これは銀賞作家でも売り上げが落ちると強制されているプロットの特徴でもあると思う。
・ 審査員奨励賞とは
一般に受賞作品とされる大賞〜銀賞が着想、構成、奇想に優れた面白い作品を選出するのに対し、奨励賞は編集者・出版社が喜ぶ作品、ようはオタク読者が本命とは別に買ってしまいたくようなお約束とサービスに溢れた作品を書ける作家をキープするための賞と思っていい。最初は佳作未満を抑えるような感じだったが、最近は対オタクビジネス専用作品ばかり。
でも、ビジネス的にはバカにはできない。keyの『clannad』よりもmebiusの『めびにゃ!』のほうが明らかに採算効率は良いはずなのと一緒。雷撃(仮)においても審査員奨励賞作家は定期刊行数が少ないときの数合わせに活躍しており、絵師との組み合わせ次第ではより美味しい商材ともなりえている。
別の文庫作品だが「夏緑」の『風水学園』は以下で述べる審査員奨励賞水準を全て満たした作品で、プチ・ヒットシリーズと化している。f&cのゲームも、誰が何と嫌味を言っても確実に売れているしね。
ある意味で苦労は多いと思うが、実力次第で真の商業プロ作家になるための技術と経験にもなるでしょう。以下、「売れるための本を作る」というのを目的に、最近の傾向から妄想してみた審査員奨励賞の獲りかた&売り上げ成績第一とするラノベ文庫の編集者の関心をひけるような作品の作り方としてみる。
ただし、実際にどうかは責任を持ちません。
・ ヒロインは2人
オタの目を惹くヒロインの髪型はロングが一番。黒髪なら、なおのこと良し。
しかし、作品内容によってはショートカットじゃないとダメな作品もある。そこで有効なのがツートップ方式。どうしてもショートカットが欲しければ片方をショートにして、必ずもう一人はロングにすること。
ロングがいないのとでは、ライトノベルの命でもあるカバーイラストの魅力も半減します。はっきりいって、ロングがいないと商品価値はありません。当然、そんな作品は欲しくないので賞は獲れません。
・ 服装は?
あまり綿密に文章では言及しない方がいい。明確なイメージがあるなら、その2割くらいをアウトプットするくらいでいいんじゃないのかね。
スカートの長さとか迂闊に書くと、「ぱんつはいてない」みたいな遊びをしづらくなる。
・ ならば、ヒロインに眼鏡は?
とある規模の大きい萌えオタ向けアンケートの結果によると、眼鏡っ娘は人気がなかったらしい。メガネはイラネ('a`) と書かれるくらいに。
眼鏡が好きな萌えオタはごく一部の声が大きなオタだけらしいので、そのほか大勢のオタを相手にして人気を取りたい奨励賞を狙うなら却下。どうしても眼鏡が書きたきゃ、自分の同人誌だけに。
・ サービスシーンを文庫換算で40〜50ページ以内に入れる
執筆の上で、まずは挿絵がどこに入るかを第一にイメージしながら書くこと。雷撃文庫(仮)なら口絵が最初にはいるため登場キャラの姿形は小説本編よりも前にインプットされる。
そうなると、次に大事なのは最初の挿絵でいかに読者を惹きつけるか。ここで有効なのが、ヒロインのサービスカット。ここでは、上記で挙げたヒロイン2人のどちらでもいい。どちらかを脱がす。脱がしかたは自由だが、突発事故的なもののほうが好ましいでしょう。間違えてお風呂に、主人公の隠された力が暴走してヒロインの胸元が裂けて……、他いくらでも。
しかし、そのシーンを絵師や編集者がイメージしたときに乳首を隠せないような出させかたはng。ショートカットのヒロインを脱がすことに決めたときは、とくに要注意。ロングヘアーのヒロインなら「ラブひな」で有名な乳隠し手法が使えるのでok。
中途半端に出し惜しみをして、ヒロインとは別の女性キャラを登場させて脱がすのはng。カバー絵で萌えを感じた人が手にとっているんだから、そこでカバーに描かれたプリティーなヒロインではなく別キャラがサービスしたって、決定打にもならないもの。ヒロインへの愛着が邪魔をするかもしれないが、そこは割り切りましょう。
「良い作品書けば編集者が指示するんじゃないの?」と思う人もいるかも知れないが、それは甘い。自分から率先してこういうサービスを入れられる人のほうが、奨励賞で確保しておきたい便利屋作家としては有望に見えるじゃないですかと。そもそも、奨励賞を狙うような技術レベルなのにサービスシーンがないのでは、根本的に編集者の目を惹かないし。
・ 必要な物語コンセプトは
ボーイ・ミーツ・ガールが無難な線。気の利いたギャグと序盤からの色気を交えた展開が望ましい。
作者がベタだと思っていようが読者には関係ない。iちせ さんが「○○たん、萌え〜」と書きたくなるような背中がかゆくなるようなベタベタ恋愛劇がいいんじゃないのかな。上記さえ満たせば、舞台や時代設定は不問。現代の学園だろうとsf学園スポ根モノだろうと、戦国時代だろうと構わない。
ただし、バトルものであることは必須。戦う主人公&ヒロインでいこう。最近の奨励賞はハリウッド的なものが求められている気がする。相手は異形でも人間でも構わない。
また、作者が安易と思おうと知識は無くて書けなかろうと、魔法や方術などの異能力を取り入れること。理由は後述する。安易な異能力の登場はその存在だけでメインの銀賞までの受賞を逃す理由ともなりうるが、審査員奨励賞は別モノと思っていいのでok。ただし、その描写はできるだけビジュアル的にイメージしやすく派手なものを。
主人公が魔法を唱えると、鎧騎士の姿をした紅蓮の炎が立ちのぼり敵を焼き尽くす、そんなベタなイメージでいい。
ただし、主人公か他のキャラに必ず炎に関連した能力を与えること。
・ 主人公は強いのと弱いの、どっちがいい?
女遊びに手慣れているようなヤツでなければ、どっちでもいい。
ただし、弱いのを選んだ場合は隠された秘密ないし力があって、敵を圧倒できること。その能力がヒロインを脱がすことにも繋げられれば、なおのこと良し。
どっかの奨励賞作品みたいに、主人公の異能力キャンセラーが働いたことで、ヒロインの魔法防御服がビリビリに破けて素っ裸になるくらい気が利いてると、選考側も笑えてプラスだろう。
・物語の展開は
バトルものでも、タイムリミットを必ずつけること。
○日で必ず終わるというの制限が付いていて、そこに向かって突き進む少年・少女を。ライトな快感を楽しみたくて買っているのだから、どこが終結点かわからないと辛い。
2〜3日くらいのリミットのほうがいいでしょう。長くても5日。どっかの1800円エロゲみたいに薄くてサービス満点なものを作りましょう。
・後半で髪ロングなキャラのサービスシーンを
脱がしてあられもない格好をさせるように。ヒロイン同士でふざけて絡んで百合・レズちっくでいようと、敵に捕まって脱がされてようと何でもいいや。見せ場を作って、細部は挿絵に全てを任せましょう。
・ オチはベタでいいから派手に
なお、ラストバトルは大爆破で終結!が必須。このためだけに、爆発炎上に結びつけられるような能力者を登場させるなり、仕掛けを出すなりしておきましょう。
爆発の結果として、主人公かヒロインのどちらかの生死は言及しないこと。そのままエピローグに突入して、みんな助かっていましたよ、な展開に。
ここで何か一味、序盤から綿密に張ってあった伏線を生かしたサプライズがあると有望。
・文章技術はいらないの?
どこのラノベ文庫でも構わないから、そこのアニメ・ノベライズ程度の文章技術を身につけることが別途に必須と考えてください。登場人物が部屋から立ち去るシーンを書くのに、いちいちドアの開け閉めまで描写するような文章は論外です。
とりあえず、第一回はこれで終了。
奨励賞は作品としての完成度よりも、安定した内容と読者を意識したサービスがきちんと盛り込まれた作品に与えられるため、小説としては三級品以下でも売り上げでは売れ行きの悪い小説としては一級品タイプに勝ちうる。
※しつこいようだが、洒落+某氏向けに書いたテキストなので、こんなの真に受けた人が何かやらかしても私は責任を取りませんよ('a`)
▼プロフィール
亡霊
公開サイトなし・詳細不明。銀盤カレイドスコープの
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