運命の下北沢でパラレル・クリエーション&そこにいくといるSF系のかたがたと出合ったわたし。正直いって、すごーくすごーく仲良くしていただいたとも思わないし、ほんとうの「なかま」と認知してもらえていた自信はない。「近所にすんでる、かわりだね」ぐらいの感じだったんじゃないかな。 |
『彼女とストンプ』 著 岬兄悟 初めて集英社コバルト文庫に進出した際の作品。少女向け青春小説。 『魔女でもステディ』 著 岬兄悟 ある朝目覚めたら隣に全裸の美女が…、というストーリー。元(1985)はハヤカワ文庫JAだったが、現在は徳間デュアル文庫に収められている。 →bk1 →ama →楽天 |
『彼女とストンプ』(岬さん)は、昭和58年(1983年)12月の発刊です。『瞑想者の肖像』でデビューなさって、『風にブギ』など、ひじょうにエッジの起ったSF作品をお書きだった岬さんの、はじめての……ひょっとして、唯一? のノンSF青春小説です。ロック&ブルース少年だった岬さんの、自伝的意味合いもちょびっとあるのかもしれない。その後、盟友とり・みきさんのイラストを得て、ちょっとエッチな妄想(願望充足型、といったら失礼にあたってしまうんでしょうか)SF『魔女でもステディ』シリーズでおおあたりなさる前の、一瞬の「実はこっちの方向もありなんだぜ」なステキにせつないお話でした。 |
『瞑想者の肖像』 著 岬兄悟 ハヤカワ文庫JA 1981年 『風にブギ』 著 岬兄悟 ハヤカワ文庫JA 1986年 『青春デンデケデケデケ』 著 芦原すなお 書影は角川文庫(1998)のもの。 |
『スターライト☆だんでぃ』 著 火浦功 書影はゆうきまさみイラストのコバルト文庫時のもの。 『死に急ぐ奴らの街』 著 火浦功 書影は徳間デュアル文庫時のもの。 高飛びレイク 1982年から『宇宙カジノ略奪作戦』『99%のトラブル』『ファントム・レディ』(いずれも早川書房)が出ている一連シリーズを指す。 森茉莉(1903〜1987) 作家。森鴎外の娘。作品を見ると彼女のお嬢様ぶりがよくわかる。少女モイラは彼女の理想像だったともされる。 『SFバカ本』 大原まり子氏と岬兄悟氏の共同編纂のSFアンソロジー。1996年に「たわし篇」が出版され、好評により現在まで11巻が出ている。 公式 : SFバカ本ホームページ 『ハイブリッド・チャイルド』 著 大原まり子 ハヤカワ文庫JA 1993年 星雲賞受賞の傑作SF。 →bk1 →ama →楽天 『吸血鬼エフェメラ』 著 大原まり子 ハヤカワ文庫JA 1996年 『ミーカはミーカ トラブル・メーカー』 著 大原まり子 コバルト文庫 1985年1月 フィフス・エレメント SFアクション大作。監督は「レオン」のリュック・ベッソン。キャストにミラ・ジョヴォヴィッチがいる。 →ama ユマ・サーマン 女優。「キル・ビル」の主演の人。 風見潤 推理作家、SF翻訳家。講談社X文庫『幽霊事件』シリーズなど、若者向けの人気ミステリーを送り出している。 公式 : Jun's Journal 小林弘利 作家。コバルト文庫・スニーカー文庫などに多数のファンタジー・SFを送り出している。 | 対していまや日本一? 原稿を書かない小説家で有名な火浦功さんにも、「比較的たくさん書いていた」時期があり、『スターライト☆だんでぃ』シリーズは、なんと、たった二年半の間に三冊も書かれています。いかにも火浦さんらしい、楽しくてオシャレでカッコよくて、ものすごく読みやすい、ページの下のほうに白いところがたくさんある、一見すると「ただ思いつくままにダラダラ書いているように見える」が、実は壮絶な思考と試行錯誤と無駄の削り落としの末に(でしょ? なんだよね?)ようやく到達する、あたかも俳句や山水画のごとき、名作であります。後にスーパーファンタジー文庫に再録されてたりするのは、けっして、火浦さんが「ちっとも新作を書かないから」火浦ファンが放置プレイに耐え切れず、せめて同じのでもいいからもう一回読みたいと思ったから、ではなく、「ゼッパンにしておくなんてもったいなさすぎる名作だから」だと思います。だよね? わたしは火浦さんの小説の中では『死に急ぐ奴らの街』(徳間デュアル文庫で入手可能)がダンゼン一番好きですが、『高飛びレイク』をはじめて読んだときにはほとんど、恋しました。作品のあまりのすばらしさに、うっかり作者にもかすかに。本人にお目にかかって、そのルックスのあまりのカッコよさ(作品とちゃんとあってるし)にもグラッときました。しかし、火浦さんはあくまでヒョーヒョーとしてて、いっつも何考えてるかわかんなかったので、とてもゲンジツのひととは思えなかったりしました。その何考えてるかわからないあたりから(たぶん)出てくるだろう、悪役ビランデルさまもステキです。
大原まり子さまは、小説家ではありません。文化人です。その偉大なる御作品の数々にはひとつのハズレもありません。デビュー作『ひとりで歩いていった猫』を読んだわたしはあまりの素晴らしさに悶絶し、そのひとが同い年(おーちゃんが3月生まれでわたしが4月なのでたった一ヶ月違いなのに学年はひとつ違うのだが)であることに気づくとほとんど自殺したいぐらい絶望しました。はじめて会ったときには、その美貌と、品格(聖心卒ですって!? まぁっその淡いグレイのいかにも質のよさそうなワンピースはひょっとしてほんもののPINK HOUSEではなくて?)、おっとりとしたものごし。……日本に階級社会がないなんてウソだ、ここに生まれながらのお姫さまがおられるではないかぁ! と思いましたほんとです。のち、いっしょに沖縄旅行(!)にいった時、食事かなんかの時間になって「さっ、いくよー」と申したところ(←すみません、尊敬しているわりにタメグチきいてます)「うん……わかった……」と、ゆっくりとおきあがられ、(それまでベッドになんとなくアオムケになっておられたのだったような気がします)ゆっくり、ゆっくりと、スニーカーのヒモを、お結びになられはじめられました。結び終わられるまでにカタツムリがあっちの枝からこっちの枝まで這っていくぐらいの時間がかかりました。フツーのやつがこんなことやってたら「さっさとしろー!」と怒鳴りたくなるところですが、おーちゃんの場合、あまりの優雅さと、邪気のなさのため、責めることなんてできやしません。御作品でしか存じ上げない森茉莉さまってこんなかただったのでは……あるいは森茉莉さまのお書きになられた「モイラ」ってこんな少女だったのでは……と思われるようなおーちゃんでした。もひとつ。みんなで熱海(!)にいったとき、朝の露天風呂で記念撮影をしたのですが、そこにいた四人(撮影しているわたし以外)のみなさんのタイドが実にそれぞれの性格そのものを現していて、おかしかったです。もしかして記憶ちがいがあったらごめんよ。小室みっ子ちゃんは、すっぴんでもものすごい美女なのに、髪をぬらさんようきっちりシャワーキャップをかぶり、まんがいちにもハダカが見えないように両手両足をカメノコのように縮めていました。藤臣柊子はあっちむきになって胸を隠してイタズラっぽい笑顔とピースをこっちに向けていましたがキュンとしまったお尻がそのままだとはっきりいってほとんどまるみえだったので、そっと角度をずらして、隠さないといけませんでした。正本ノンちゃんはごく自然体で、それでいて、ヤバイところはまったく見えません。ガードばっちりです。おーちゃんは……「お……おーちゃん!」撮影者はさけびました。「すわって。もうちょっとすわって。じゃないとDPE屋さんに出せない!」そんなおーちゃんも、岬さんと結婚してから、だいぶ変わったなぁ。なにより、ものすごくテキパキしたひとになって、その名も「SFバカ本」というシリーズを監修! なさったりしちゃうようになるとは。びっくりしたです。いちばん好きなのは『ハイブリッド・チャイルド』かなぁ。『エフェメラ』もすごいよなぁ。でも、ミーカもすげぇって。ほんとに。フィフス・エレメントが97年? それよりはるか12年前に、ほとんど「ミラ・ジョボヴィッチ」です。いや、むしろ、ユマ・サーマンか? リュック・ベッソン、日本語よめるんじゃないでしょうか。大原まり子をパク……いや、リスペクトしてるんじゃないでしょうか。
このすごい天才のかたがたを、三人も! コバルト虎の穴に招待してしまったのは、わたしです、とさっきいいました。 |
ちなみに、そーいえばわたしの原稿料はデビュー以来四半世紀たったいまでもほとんど値上がりしてません。だいたい一枚4000円か5000円です。しかも前にもどっかでいいましたが日本的謎な「あ・うん」関係によって、ギャランティの話が事前に出るということはほとんどありません。出るとしたら、フツーより「高い」場合のみです。PR誌とか、小説が専門ではない雑誌だと「えええっ!」と思わず叫んでしまうぐらい高い金額を提示していただいて、しかも「これで宜しいでしょうか?」ってきいてくれたりするので、まるで別世界です。とうぜん、平身低頭して「不肖くみさおり、たとえ泥の中に倒れてもかならずやこの作戦を完遂いたします!」と敬礼のひとつもしたくなってしまう。 |
瀬名秀明 作家。『パラサイト・イヴ』で第2回日本ホラー小説大賞受賞。『BRAIN VALLEY』で第19回日本SF大賞受賞。薬学博士。 公式 : 瀬名秀明の博物館 |
ちなみに「SFであるかどうか」を問題にするのはそもそもおかしいんじゃないのか、と かの瀬名秀明さんがある年のSF大会のパネルディスカッションでおっしゃっておられました。SFモンはともすると、「小説としてはまぁまぁ。でもこれはSFじゃないね」とおっしゃる。いわれたほうはなんだかよくわからないけど腹がたつ……と。 原稿受取日 2004.4.21
公開日 2004.5.7 |