たしかあれは集英社か講談社の少女マンガ系のパーティーでした。ふと、どうみてもピンクハウスまたはPOWDERのワンピースをお召しになったすっごく背の高くて顔がちっちゃくて細い女のひとがツカツカとこちらに近づいてきて「くみさおりさんですよね?」とやや甲高い早口でおっしゃいましたです。「わたし、めるへんめーかーです。いつも読んでます!」「おお! めるさんでしたか! 存じてます存じてます、読んでます」握手! |
池田理代子 漫画家。代表作に『ベルサイユのばら』『オルフェウスの窓』など。作家、エッセイスト、声楽家など、幅広い分野で活躍している。 公式 : 池田理代子オフィシャルサイト 『おにいさまへ』 著 池田理代子 書影は中公文庫版のもの。 →bk1 →ama →楽天 |
くだんの彼女はまさに、男女七歳にして席をおなじうせず、みたいな生活をマジ18歳までおくってきたわけで、その世界は、公立の共学(しかも時々は国立付属、時々は地元のフツーの学校)を、一匹オオカミ同然でテンテンと渡り歩いてかなりスサンで孤立した精神生活を送ってきたわたしにとっては、見たことも聞いたこともないほど「純粋」で、「善意たっぷり」で、ほとんどファンタジーな異界そのものだったのです。おかみき(あー、いきなり通称でかいてますがこれはいまだにわたしの前世の代表作といわれるところの『丘の家のミッキー』全10巻のことです)における未来(みくとよみます。おかみきの主人公にして一人称の語り手です)の「フツー考えられないほどオクテで鈍感でとんでもなくトンチンカンな感性」は、あれは、全部が全部私の創作というわけではありません。というか、この某友人から聞かされた「とある異界で、推奨されないた資質」を、やや誇張したもの、演繹したもの、に他ならないものだったのです! |
絵:めるへんめーかー 絵:竹岡美穂 |
でもって、「おかみき」。 |
(C)集英社 1988 「花のお祭り少年団」 イラスト担当は、ページをめくると、ひきずり出された大腸がキラキラに薔薇しょって描かているというショッキングなのか華麗なのかよくわからないホラーマンガでいっせーをふーびした「ぽっくん」こと小林ぽんず先生。最近はマンガかいてないみたいだなぁ。ちなみにオビがなくなっちゃったんだけど、そのオビに名文句があって 「めい・ざ・わーるど・びー・ハッピ!」 これは当時なかよく沖縄旅行などしていた某マンガ家さんとそのアシさん一行をモデルにした作品で、「よっちゃん」として出てくるやつのモデルは、なにを隠そう、あの青山剛昌先生です(笑)。コナンどころか、YAIBA! が世に出るか出ないかの頃。昔はこーゆーひとだったんですけど、すっかり太りましたね、最近。コナンのはじめのほうに久美とか沙織とか波多野とかいうやつが登場するのは、たぶんこれのシカエシ?です。 (文責:久美沙織) (C)集英社 1989 「みやは負けない!」 イラストは小原智佳さま。めるちゃんのご紹介でした。昭和45年ごろの「団地」の小学三年生の女子が主人公なのですが、そのモデルは、藤臣柊子です。彼女が語ってくれた「自分がちっちゃかったころ」を空想して書いたものです。 (文責:久美沙織) 「燃える月」 「繋がれた月」というタイトルを編集部に拒絶されたもの。イラストは梨木有実さま。「ぶ〜け」にお描きになられた作品を見てその絵の美しさに打たれ、編集部ごしにお願いしておひきうけいただきました。日本より台湾に近い沖縄八重山の架空の島をめぐる南海冒険サスペンス「秘宝もの」。定期購読していた『コミックおきなわ』(すでに休刊)などでドロナワ式に勉強した琉球方言がめったやたらに出てきます。「うっそー! → ゆくしー!」とか。『ちゅらさん』より何年はやすぎたのか……考えるのもむなしい。 (文責:久美沙織) |
しかし…… |
(C)青春出版社 1998 『感じる恋愛論』 著 久美沙織 |
そもそもわたしは15歳中学三年生かそこらで「カレシ」なんて欲しがるなよと思っていた。デキちゃったらしょうがない。好きになっちゃったらしょうがないよ。でも、なにもわざわざムリして作らなくてもいいべさ。だって「恋」って本質的に地獄なんだよ。自分が般若になることなんだよ。いっちゃったらもどってこれない門をくぐることなんだよ。たった15でもうそこまで覚悟していいほど、満足にまっとーな世の中を生きてみたのかいあんたらは? |
『鏡の中のれもん』 著 久美沙織 |
でも……どうやら、コバルトで「ウケ」る小説としては、そーゆーのって、もう「ふるい」んだな。 |
花井愛子 講談社X文庫を中心に著書多数。代表作『山田ババアに花束を』は映画化、ミュージカル化されている。その他、大人向けの小説、エッセイも多く手がける。 |
その頃、人気のトップをとっておられたかたがたは、既に、既婚者で、お子さまもおられて、マンガ原作者などの経験をたっぷり積んでこられたかたがただった。「売れる」原稿を書く力をもってるひとたち、編集部の要望に答え、読者の要求に答えることが、たぶん「苦」ではないかたがただったのだと思う。 |
(C)ポプラ社 『若草物語』 著 ルイザ・メイ・オルコット Louisa May Alcott →bk1 →ama →楽天 |
四人姉妹といえば若草物語(ちなみに原題はLittle Women)。 |
ローリーと結ばれるし 若草物語のヒロインは確かにジョーではありますが、ローリーと結ばれるのはエイミーです。そしてローリーはジョーにとっては理想の男性というわけありません。ジョーは、年の離れた教授と回り道の末、本当の愛を育んでいきますので。 (引用:遥様の書込) すみません、おっしゃるとおりです(涙) (文責:久美沙織) |
ノンちゃんはジョー。背が高くて男性的で、男勝りで……古風な姉に対抗してリアルな現代的女性への道を模索しているけれど、実のところいちばんロマンチストかもしれない。ちなみに「若草物語」はあきらかに彼女がヒロイン。理想の男性ローリーと結ばれるし。 |
そーいえば、いつだったか、このコバルト初期四人組でヨタ話をしていて、誰はどんな死にかたをするだろうかってハナシになった。 |
そんな時、たまさか偶然にももたらされたのが『MOTHER』ノベライズへの誘いであり、それがひいては、日本ゲーム界の金字塔(だよね)であるところのドラゴンクエスト・シリーズの「伝記作家」という、こんな名誉なことほかにありますか、な方面への道を拓いてくれたりしたのだ。 |
『ありがちのラブソング』 著 久美沙織 |
日本で最初に、パソコン通信と「ネット仲間」をストーリーの中心にどっかりと据えたエンタメ小説を書いたのはたぶんわたしだと思う。『ありがちのラブソング』88−V、初版昭和62年つまり1987年の4月だ。表紙イラストおよび挿絵は藤原カムイ。あらすじ。とあるチャット場で人気の架空の電子人格アイドル(当時のことだからほぼテキストのみの存在)が、謎の「誘拐犯」に拉致られた。そこで、その頃には既になくなってしまってたジミーな草の根ネットを過去に形成していた名うてのハッカー(日本におけるオンライン通信の初期使用者)たちが、ひとりひとり探し出され、再集結して事件解決をはかるのである。「敵」の正体があまりにショボくて、ミステリーとしてのデキは最悪だが、少なくとも「なにしろそーゆー世界がある」ってことをちゃんと書いた「いっとーさいしょ」である。そのことだけはジマンしてもいいと思う。 |
高橋源一郎 作家。「さようならギャングたち」「ジョン・レノン対火星人」「ぼくがしまうま語をしゃべった頃」などがある。 シニフィアンとシニフィエ 言語学の用語。言葉を構成する要素のうちシニフィアンが「音」、シニフィエが「意味」といったところ。能記と所記、記号表現と記号内容ともいう。 |
高橋源一郎(灘校もと生徒会長)がわたしの書いたもの(どの時点のだったかはわすれた)を評して、シニフィアンとシニフィエが遊離している……とゆうてくれたことがあり、哲学科卒の威信にかけてあわててラカンだのドゥールスだのガタリだの「の初級入門書」(だってホンモノは難しすぎるんだもん)を読んでみて、それでも、ホメられてるのかケナされているのか結局のところまったく判断できなかったりしたことがあるのだが、遊離していたのは、むしろ、読者および編集部がコバルトで人気を得ている作家に当然のこととして要求するものと、わたしが「やってみたいこと」「だってこれカッコいいじゃん? と思うこと」だったような気がする。 |
「ラブホテル」 ホテトル嬢とタクシーの運転手の愛を描く。脚本は「ルージュ」の石井隆、監督は「魚影の群れ」の相米慎二、撮影は篠田昇がそれぞれ担当。 →ama |
いやエッチを否定するわけじゃないですよ。わたしの20代の最愛読書は『O嬢の物語』だったし。あまたなメディアがスケベな気分をもりあげるために存在する……というか、ほとんどの場合「それ」で発展するということもよく理解はしているつもりだ。けど……あのさぁ……こんなとこでこんなこといっていいのかどうかわかんないけど……エッチって「ダサく」ない? おとことおんながはだかになってすったもんだするなんていうのは、どこか物悲しいか、滑稽か、ただただ暴力的で破滅的か、それらの混合か、ま、どれかじゃないですか。 |
そーだ。いつかわたしノンちゃんとナニカのハナシをしていて「だって感情ってもんは、ようするに脳の中で化学物質の割合が変化することじゃん」といって絶句されたことがある。「……くみくんは……なのに小説かいてるの?」「そうだけど?」悲しみも喜びも苦しみも痛みも、わたしには「つきつめればどの範囲のニューロンをどう刺激するか」の問題に思えてしまうらしい。 |
『小説ドラゴンクエストV 天空の花嫁』 著 久美沙織 →bk1 →ama →楽天 |
じゃあ、どういうのだと描き甲斐があるのか、書きながら自分もおうおうと萌えてしまうかというと……『小説ドラクエ5』読んでください。腐った死体のスミスのビアンカに対する感情、あれがわたしが「愛」と思うものだ。ガンドフが双子の赤ん坊に対してやったこと、あれも。 |
『ファインマンさん最後の授業』 著 レナード・ムロディナウ 訳 安平文子 →bk1 →ama →楽天 |
よーするにわたしは「ふつーいっぱんのおとな」とか「ふつーいっぱんのコバルト読者」が一番興味を持ちそうなことに、どーやら、あんまり興味がない、へんなやつなのだ。 |
『マンガ原稿料はなぜ安いのか?』 著 竹熊健太郎 →bk1 →ama →楽天 |
ちょっと遅れて読んだ今年の週刊朝日の3月12日号に『マンガ原稿料が安いワケ』というたいへん興味深い記事があった。竹熊健太郎さんの『マンガ原稿料はなぜ安いのか?』イーストプレス刊 に関するみひらき2ページの短い記事であるが、その中に『マンガ産業論』(筑摩書房から7月刊行予定だそうだ)を執筆中の中野さんというひとの発言が紹介されている。 原稿受取日 2004.4.3
公開日 2004.5.14 |