【開演】

(開演の拍手)
柏崎玲央奈(以下、──):おはようございます。遅れてすみません。こちらから有川さんと長谷さんですね。(と示し)はい、よろしくお願いします。お二人は内容がSFであるということでたぶん、こちら京フェスに呼ばれたんじゃないかと思うんですけども、その辺の話とかデビューまでのお話ですとか、ライトノベルとかセカイ系とか萌えとか、そんなところを伺っていきたいと思います。マイクはどうでしたっけ。入ってますか?
有川浩(以下、有):わたしのはこれで。
長谷敏司(以下、長):聞こえますかー?
──私のは聞こえるけど、お二人は聞こえてる?
長:聞こえますかー?
有:後ろの方は聞こえますか? (後ろの人反応して)あ、ありがとうございます。
──あ、そういえば本当は(私じゃなくて)※三村美衣先生が座っているはずなんですけども、ちょっとお忙しいということで。今ここに来てるのはライトノベル関係で暇な方かなあなんて。私は間違いなく暇な人です。三村先生は校了で忙しいそうでピンチヒッターということになりました。よろしくおねがいします。ということでそれじゃまず、それぞれ自己紹介がてら、ご出身とか差し支えなければ年齢とか。(有川さんの微妙な反応)えー、そのへんはちょっと……? じゃあ有川さんお願いします。
有:はじめまして有川浩と申します。去年の第十回の電撃大賞でデビューさせて頂きました。なんかSFだかなんだかわからないものを書いてお金を頂いています。すみません。
──(長谷さんへ)
長:はじめまして長谷敏司といいます。2001年に角川スニーカー大賞で賞頂きましてデビューさせて頂きました。まあ三年経ってますが実は二冊しか本出ていません。なのでこんなところに呼んで頂いて、本当に嬉しいやら場違いさに小さくなるという感じで。みなさんよろしくお願いします。
──はい。ありがとうございます。
有:(ぶつぶつ)長谷さんにいろいろ代わってもらおうかな。
長:喋りなさいて。(新作発売直後で)いちばん喋らなきゃ行けない人が。
──お二人とも関西なんですか?
有:わたしは高知の出身で、大学のときに上京してきてからそのまま。
──そのまま。ああ。
(※大森さんが有川さんのマイクを直す)
有:すみません。(申し訳なさそうに)
──長谷さんは?
長:えと、僕は大阪生まれで。25年ほど大阪にいたんですけど、5年ほど前に引っ越して今は千葉にいまして。
──そうですか。
長:ちょうど大阪弁が怪しくなり始めるころで、聞き苦しいにせ大阪弁がでるかもしれませんが、空き缶とかは投げないで下さい。
──じゃあ、今日はわざわざ千葉から?
長:千葉から朝一で。六時くらいの新幹線に乗らないと間に合わないんで、※寝てません僕は。
──経歴というか? お二人は作家になりたいという気持ちはだいぶ前から?
有:そうですね。やっぱり出来ればなりたいなあって思ってました。
──それは何才ころから?
有:なんでしょう。小学校の六年生くらいの時にかしら。というか。
──そのころから、じゃあ書いてらっしゃったとか?
有:そうです。わりとちっちゃい頃からクレヨンに落書き帳でなんか、お話を書くみたいなのが好きな暗い子供だったので。
──それは普通はなんか、「お姫さま」とか書くところに文字を書いてたとかですよね。すごい。
──長谷さんは?
長:僕の場合はもうなんといいますか、けっこうありがちな作家の志望動機だと思うんですけども。就職して会社いってたとき突然「俺何したいねん?」みたいな、よくある自分探し系の衝動にぱーんと打たれてスピンアウトしまして。そのあと専門学校とか入ってふらふらしてたら、ちょっと重い話ですけど、病気やっちゃいまして。で、これから25歳っていうものすごい中途半端な、これから就職がちょうど厳しくなる時期にやっちゃって。
──ああ。
長:で、おいおいこれから俺どうするんのよって言う。
有:そうそう、わたしたちの世代ってちょうど大学卒業の頃にバブルが弾けて一番厳しかったんですよね。
長:一番冷え込んだ時期でしたね。ちょうど就職で22歳ぐらいなら、未経験者でこれから会社で仕事を教えようって時期。で、25〜6歳の新人っていうと、だいたいちょっと経験者採用して、これからまあ即戦力でやってくれよっていう就職のはずで。(即戦力の経験者採用の年代に入りはじめる)なのに、「おいおい俺、今、病人になってどうすんのよ」ってことになっちゃって。「まあやっちゃったものはしゃあないからなんかプラスにしたらんとなんか嫌やなあ」っていう。
──これを契機にしたいって?
長:なんかプラスに転じるようにせえへんと。苦労するようなことがあると、ばーんと成長もあるように見せかけといて、本当は意外に無いじゃないですか? 成長しようとか、なんか契機にしようとか考えてないと、そのまま切れて終わっちゃうんで。なにがしかやらんと、なんか自分の中でもうやってられなかったんですよ。
──じゃあその頃にもう書き始めたんですか?
長:そうです二十代後半だったんですが、書き始めたのって。なんか今やっていること(物語作り)自体が、せいぜい5年も無いようなキャリアのものなんで。
──それからすぐ投稿とかして?
長:ですね。ちょっちょっと書いたことはあったんですけど。まともにかいて推敲まで書けたものが、まあ幸い二作目くらいで賞を戴けたんで、まあその辺はラッキーと。まあその辺はばーっと病気で落ち込んでいかずに浮上の切っ掛けを頂けて、スニーカーさんありがとうございますという感じで。
──じゃ応募とかは。じゃあその二作目で何社目くらいだったんですか?
長:え、二作目ですか?スニーカーだけ。
──あ、本当に。
長:書いて、うーんちょっとダメっぽいなってのが一本あって。それから、まあもう一回普通に書いてみるかと。実は、元々コメディ系の本書いてたんですけど、突然もう(コメディは)いいやって。こんな状態で、笑えるものが書けるつもりで自分に嘘ついててもなあっていう感じで。まあ明るくならんでもいいやん的に書いてみたら、賞を取っちゃったって言う。
──普通にスニーカー大賞だけに応募して、それが……
長:ていうか二重応募じゃないですか、たくさん応募したら。それはまずいでしょ。
──ダメだったら書き直してまた別のところにとかっていうのがあるかなあと思ったんですけど。
長:ああ。まあ一発ダメだったら他に送ってもダメに違いないと、ばーんと切り捨てて書いて。結局自分が何すれば良いものが出来るのかわかんないから、そこまで執着するほどのものが見られなかったっていう感じですね。
──でも、すごいファンつきましたよね。
長:ああ。まったくもう挿絵書きさんの※CHOCOさんのお陰でございます本当に。ここ、しっかり書いてくださって本当に。
──有川さんの方は? 活動というのか。
有:高校生くらいからあの投稿を初めて。なんか三次選考とか最終選考とかにちょろちょろ残るようになって、一回止まっちゃってるんですよね
──高校生のころに書かれて。
有:うーんとですね。大学の一年生かくらいのころに一回ちっちゃい賞にひっかかりまして、そのときにこうひっかかってやめちゃったんですね。会社だとか。それからライトノベルとかとちょっと離れまして、それであとは就職とかしまして、結婚で退職することになりましたのでもう一回ちょっと書いてみようかな、と。
──有効な時間ですね。
長:やあ、もう昼間とか普通にセールスがぱーとやってくるんで集中して書けない。
有:あ、セールスは、わたし返せるんで。
長:返せるんだ。僕は、昼間からじゃ仕事にならないっていう感じで。本当にセールスとかって「ああ、またか!」という感じで。
有:すごい無礼なの来ますよね。
長:来ますね。
有:「三十歳もう過ぎてはるでしょう? それで賃貸ですかぁ?」って。
──そんなんなんですね。
有:ちょっとびっくりして。あのすみません。※××××××だったんですけど、
長:それ、セールスですか。
有:なんかねえ。お前が売りたいのは家なのかケンカなのかどっちかはっきりせいって。もう。
──例えば買うんですか? ケンカは。
有:いや、ケンカは、(と口ごもり)わりと後先考えずに。(笑)えと、デビューしたてのときも校閲さんと後先考えずにケンカをしてたり。実際は、ケンカするつもりで向こうの指摘を「わたしのセンスに合致しないので不可」とかばんばん赤入れて返してたのを、担当さんが「これは校閲に見せられない」と全部修正液で消してくれてたらしい(笑)
──えとじゃあ集中して書かなきゃといけなかったと?
長:いや、ぼくもう流石に深夜に逃げちゃいましたね。
──ああ、邪魔されないように。
長:一番ヘタレな選択肢に逃げてしまいましたね。
有:なんかあの、うちの旦那さまがすごい心が広い人なんで、わたしは最近二週間くらい晩ご飯作ってないんですけど。本当になんていうか、昼間書ける時は昼間書くけど、晩に波がきた時には晩に書くっていう。自分でまだペースが作れないので書ける時に書くというモードに。
──ああ神様が降りてきた時に。
有:神様だか何なんだかわからないんですけど。
──でもじゃあ執筆はだいたい一作目のときも。
有:そうですね二作目とか。
有:調べモノはすぐできるのが。インターネットで調べたりできるんで。
長:便利ですよね。
有:すぐに※防衛庁のホームページとか見たりとか。
長:無意味にヘリの着陸とかそんなのの動画を見たりとか。
──有川さん投稿はだいぶなされて? 長かったんですか。
有:そうですね。十回くらいしたんじゃないでしょうかねえ。
──それはもう電撃一本とか?
有:や、まだ電撃無かったから。
──あ。ええとそれは高校、大学のころから数えて?
有:そうですね。
──ちなみに、どこの?
有:わりと少女小説系とか、いきまして。
──ああ、コバルトとか、
有:小学生のころに新井素子さんの※星を行く船とか。高校生で、(先ほどの発言によりSFファンが「仲間だ!」と大喜び)すみません、そのへんはちょっと薄めに見過ごしてください、小学生で星へ行く船だったら今何歳とか考えない方向で(と宥める有川さん)。高校生の時にすごいおおはまりしたっていうかこう、魂に焼きつけられてしまったものが笹本祐一先生の※妖精作戦とか。
長:ほう。ある意味、同じようなもん読んでますよね。僕もちょうどソノラマとか。ライトノベル体験っていうと、やっぱりその辺が原体験なんです。
有:うちの年代くらいだと、ライトノベルとか初めて出てくるころだったのかなって。


対談トップページへ   /   対談 第二回へ
endline