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葉月あきさんの選。



▼プロフィール

葉月あき
趣味の店・空想堂管理人。

url : http://shujia.cside5.jp


推薦図書
・dクラッカーズ7-1 王国-the limited world-/あざの耕平/富士見ミステリー文庫
・マルドゥック・スクランブル the third exhaust―排気/冲方丁/ハヤカワ文庫ja
・七姫物語 第二章 世界のかたち/高野和/電撃文庫
・バッカーノ! 1931 特急編 the grand punk railroad/成田良悟/電撃文庫
・陰陽ノ京 巻の四/渡瀬草一郎/電撃文庫




対象作品の中から、迷わず題名が浮かんだ作品を5つ。作者名五十音順で。


・『dクラッカーズ7-1 王国-the limited world-』(あざの耕平 / 富士見ミステリー文庫) ある地方都市の若年層に蔓延する謎のドラッグと、それに付随する悪魔を巡って繰り広げられる物語。

この巻では主人公カップルもさることながら、絶望的な状況にも負けず一人戦いつづけた正義の少女探偵・海野千絵の存在が光る。

終盤では攻める側・守る側ともにほぼ役者が出揃って、最後の決戦に向けての盛り上がりも最高潮に。最後まで熱い作品でした。



・『マルドゥック・スクランブル the third exhaust―排気』(冲方丁 / ハヤカワ文庫ja)

「少女と敵と武器」についての物語。

2巻後半から分量にしておよそ1巻分相当の分量が使われたカジノシーンはどれも楽しめるものの、やはり作品最大のクライマックスでもあるブラックジャックが圧巻。これは震えがくるほど凄まじかった。

また、カジノのおかげで印象が薄くなったと言われる最後の銃撃戦もそこらの作品に全く見劣りしない迫力があるし、哀愁の漂う映画のようなラストシーンも秀逸。

……我ながら多少褒めすぎのような気もするけれど、とにかく圧倒的な作品だったのは確か。



・『七姫物語 第二章 世界のかたち』(高野和 / 電撃文庫)

少女の目を通して語られる、ある大陸の片隅で始まった戦乱。

この巻では、一つの戦が終わったあとの穏やかな冬の日々――新たな先端が開かれるだろう春までの、貴重な時間が描き出されています。

戦記物としての側面もあるのに血生臭さを感じないのは、物語る空澄(カラスミ)の性質ゆえか。独特の雰囲気がとても心地よく、愛しく感じられる作品です。



・『バッカーノ! 1931 特急編 the grand punk railroad』(成田良悟 / 電撃文庫)

笑いあり涙ありの、馬鹿騒ぎの名に相応しいハイテンションなシリーズ。ノリはほとんどb級娯楽映画。

この「特急編」では兎にも角にも『線路の影をなぞる者(レイルトレーサー)』の傍若無人な暴れっぷりが素敵すぎ。馬鹿ップルも最高。

あと、イラストが絶妙なタイミングで挿入されるのも良い。……誤字の多さは、まぁ、ご愛嬌と言うことで……。



・『陰陽ノ京 巻の四』(渡瀬草一郎 / 電撃文庫)

しっとりと情緒ある雰囲気で紡がれる、平安京の陰陽師たちの物語。地味ながらも、土台のしっかりした物語に引き込まれました。

切なく哀しい別れと残された彼の号泣に、思わずもらい泣き。最後の一文がそういうことなのかどうか、想像する余地があるのがまた良かった。

同時収録されている「絵草子・訃柚」は語りは勿論のことながら、イラストも堪能いたしました。





……以上です。

『流血女神伝 女神の花嫁』(須賀しのぶ / 集英社コバルト文庫)は迷ったものの、クライマックスに当たる後編が期間外のため今回は投票見送りました。

おまけで、個人的に好みでひっそり応援したい作品を5つばかりピックアップ。





・『キターブ・アルサール 皓い道途』(朝香祥 / 角川ビーンズ文庫)

架空世界の沙漠を舞台にした、王道ヒロイック・ファンタジー。

愚直なりに成長していく主人公も悪くないけれど、個人的には敵役含めた周囲がツボにはまった。



・『王国神話 空から降る天使の夢』(明日香々一 / 富士見ファンタジア文庫)

記憶を無くした少女と王子様の恋と、危機に瀕した一つの世界の行く末を描いた物語。

あまりに出来過ぎな舞台設定も、ちゃんと意味があることが中盤で明らかに。読後感が良く、素直に良作と感じられました。



・『霧の日にはラノンが視える』(縞田理理 / 新書館ウィングス文庫)

ロンドンの片隅に暮らす、妖精郷の住人たちの物語。

作品を包む優しい雰囲気に、なんとなく惹かれる。毒がないのでさらりと読める反面、物足りなく感じる部分もあり。



・『吉永さん家のガーゴイル』(田口仙年堂 / ファミ通文庫)

くじ引きの景品で当たった自動門番石像「ガーゴイル」と、それ引き当てた吉永家の兄妹を中心に繰り広げられるご町内コメディ劇。

キャラクターも立っていて、全体的に手堅くまとまっている印象。ガーゴイルの成長物語としても普通に読めます。



・『癒しの手のアルス −嘘つきたちが駆けていく−』(渡瀬桂子 / 集英社コバルト文庫)

どんな病や怪我でも治す『癒しの手』の能力を持つ人物とその相棒、そして病に臥す王太子のために彼らを国に連れて行こうとする騎士団との交流を描いた作品。

沢山の嘘と、一握りの真実と。決して消えない心の傷を誤魔化しつつ、馬鹿をやって笑いあうコンビが好印象。





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[フリースペースでのオススメ]

オススメしたい作品は多々あるものの、あえて一シリーズのみ全力でオススメ。





・『運命のタロット(全13巻) 』&『真・運命のタロット(7巻まで刊行)』(皆川ゆか / 講談社x文庫ティーンズハート)



砂糖菓子も裸足で逃げ出すような甘々恋愛小説が多数を占める(多少偏見まじり)ティーンズハート。

その中には幾つか異彩を放つ作品が紛れ込んでいたりしたのだけれど、このシリーズはその際たるものでしょう。

最初の数巻こそ比較的普通の少女小説のふり(?)をしているものの、主人公と読者が最初に経験するフェーデ(この作品で行なわれる闘争の総称)が終了する頃には、この作品本来の姿が徐々に現れはじめます。

それは、過去に未来に時間を移動しながら展開される、緻密で奥深く、時にはとても残酷な物語で……。



「運命決定論」の世界を許容する者、否定する者。二つの陣営に分かれ、それぞれの信念を持ってフェーデを行なうタロットの精霊たち。

ひょんなことから両者の争いに巻き込まれた主人公は、辛い経験や苦い思いを味わいながら少しづつ変わっていきます。

今はまだ過酷な運命に翻弄されるばかり彼女が、どのような過程を経て既に示されたあの最期へ至るのか。

その疑問に多少なりとも答えてくれるだろう、4月末に発売される5年ぶりの新刊&6月末予定の最終巻が楽しみで仕方がありません。



……ちなみにこの作品を布教しようとしたときの最大の問題点は、第一部が絶版状態ということだったりして。

復刊ドットコムで既に100票オーバー&交渉に入っているらしいので、上手くいけばどこかから再版されるかも?