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ぎをらむさんの選 ▼プロフィール ぎをらむ 竜人館管理人。 「レディ・ガンナー」「フォーチュン・クエスト」「ブギーポップ」「魔術士オーフェンはぐれ旅」「銀盤カレイドスコープ」については子サイトも運営しています。 url : http://www.bekkoame.ne.jp/i/ureshino/giolum/index.html 推薦図書 ・dクラッカーズ/あざの耕平/富士見ミステリー文庫 ・西の善き魔女/荻原規子/中央公論新社c★novels fantasia ・銀盤カレイドスコープ/海原零/集英社スーパーダッシュ文庫 ・しずるさんと偏屈な死者たち/上遠野浩平/富士見ミステリー文庫 ・ディバイデッド・フロント/高瀬彼方/角川スニーカー文庫 ・dクラッカーズ/あざの耕平/富士見ミステリー文庫 魔物とファンタジー世界はちゃんと現代にもあるよ、人の心の奥底にあるよと、理屈をつけて説明した作品。 オカルトというと理屈の全然通っていない子供だましな印象が強いですが、 この作品は深層心理学を応用した設定がとても良く出来ていて、うならされました。 ファンタジーというよりも人間科学的sfですね。 作品全体にも、キャラ=設定=ストーリーというか、 すべてが一体になった必然性があり、読んでいて気持ち良かったです。 この作品はドラゴンマガジン誌上の人気投票「龍王杯」で「スクラップド・プリンセス」に負けて連載を逃しました。 けれども、ライトノベルの可能性を深層心理 (別途コラムにも書かせて頂きましたが、ユングのいうところの「普遍的無意識」)まで明確に押し広げた点で、 「dクラッカーズ」の重要度は決して「スクラップド・プリンセス」に負けるものではないと思います。 ・西の善き魔女/荻原規子/中央公論新社c★novels fantasia 荒野で育った少女と、虐げられて育った少年と、宮廷で育った少女が それぞれの運命を切り開いて世界の秘密に触れるまでを描くハートフルロマンス。 本編5冊だけでは謎が明かされず、外伝3巻まで読まないといけないのが難点ですが、 シリーズを通して少しずつ明らかになっていく世界観と、それに翻弄されるキャラの描写が面白いです。 また、シリーズ全体のテーマとは別に、1冊1冊にお耽美〜なネタがあるのも良いです。 特に第2巻「秘密の花園」で全寮制女学院に入ってしまった美少年ルーンの運命と、 第3巻「薔薇の名前」で宮廷を渡り歩くフィリエルとアデイル、2人の少女の華やかさは、 この手の話が好きな方には一読の価値ありです。 ・銀盤カレイドスコープ/海原零/集英社スーパーダッシュ文庫 フィギュアスケーターの努力と根性のサクセスストーリー。 一応ファンタジーですが、大安売りせずに必要最小限のファンタジー設定を 最大限の奇跡に結びつけています。 しかもその奇跡が、主人公の努力によって成し遂げられているのが素晴らしいです。 才能も必要でしょう。運も要ります。でもなにより本人の努力がなければ奇跡は起きないのですよ。 競技会やそこに至るまでの凄まじいプレッシャーと、 それに打ち勝って成長していく主人公の描写は、実に実に見事です。 第2巻までで完結してしまっているので第3巻の完成度が心配になりましたが、 うまくまとめていると思います。 ・しずるさんと偏屈な死者たち/上遠野浩平/富士見ミステリー文庫 難病で寝たきりのしずるさんと、病室に尋ねてくるよーちゃん。美少女2人が殺人事件について語り合う変な作品。 ミステリーとして読んではいけません。ミステリーとしてはいい加減です。 上遠野浩平さんの作品で最も好きなのは「ブギーポップは笑わない」の第1話「浪漫の騎士」なのですが、 「しずるさん」シリーズはその「浪漫の騎士」の世界を受け継ぐ、 私にとっての上遠野作品の良いところを今も残している作品です。 しずるさんのことばかり考えているよーちゃん。 世界のことばかり考えていて、自分のことはどうでも良いけれど、よーちゃんがいるから生きているようなしずるさん。 非日常的な舞台で紡がれる2人の会話は噛み合わないけれども、間違いなくお互いを必要としています。 この「浪漫の騎士」にも「しずるさん」シリーズにも見られる奇妙な関係は、 上遠野作品のテーマである個人と世界のありかたを暗示していているように見えるのです。 ・ディバイデッド・フロント/高瀬彼方/角川スニーカー文庫 隔離された人々が謎の生物「憑魔」との絶望的な戦いを続けるお話。 本格的ミリタリーアクションと後向きな心理描写が好きな方にお薦めします。 ミリタリー面では銃器設定、作戦行動の必然性が目を引きます。 ライトノベルではランボーやターミネーターばりのアンマン・アーミーなアクションが多いですが、 この作品では銃器の破壊力より用途による使い分けが、個人の能力よりも連携プレーが重視されています。 別に私に実戦経験がある訳ではないですけれども、資料をしっかり調べてリアルに書いていると思います。 そしてヒロイン宮沢香の極端に後向きな心理描写に愕然としました。 主人公の土岐英次が前向きなだけにその落差が激しいです。 人って心の持ちようでこうも違うものなのか、 人が生きていくために本当に必要なものとはなんだろうかと考えさせられます。 同じ作者の「カラミティ・ナイト」も鬼気迫る心理描写で、こちらもお薦めです。打ちきりだそうですが・・・。 その他ピックアップ作品(作者五十音順) ・猫の地球儀/秋山瑞人/電撃文庫 ・悪魔のミカタ/うえお久光/電撃文庫 ・デルフィニア戦記/茅田砂胡/中公文庫(元は中央公論新社c★novels fantasia) ・missing/甲田学人/電撃文庫 ・ストラグル・フィールド/榊一郎/ファミ通文庫 ・キャラねっと/清涼院流水/角川スニーカー文庫 ・学校を出よう!/谷川流/電撃文庫 ・ロケット・ガール/野尻抱介/富士見ファンタジア文庫 ・グラスハート/若木未生/集英社コバルト文庫 ・猫の地球儀/秋山瑞人/電撃文庫 これはどう説明したら良いのでしょう。 スペースコロニーに取り残された猫たちが繰り広げるピーター・アーツvsガリレオ・ガリレイなお話。 秋山瑞人さんの凄いところは、ネタを練りに練って完全に自分のものにしてしまうことです。 秋山さんの言葉以外で作品を説明しようとしても、私の貧弱な脳髄では不可能なのです。 ですので、読んでいない方はまずはとにかく読んで見て下さい。読んで後悔する可能性は低いです。 「イリヤの空、ufoの夏」を読み終わって、次は何にしようかと考えている方にも是非。 ・悪魔のミカタ/うえお久光/電撃文庫 「うる星やつら」と「究極超人あ〜る」のドタバタと 「アップルシード」と「攻殻機動隊」の世界観を併せ持たせたような 1980年代の香りのする、なんだか懐かしい作品です。歳がバレますね。 10〜12巻は設定を深掘りしていてとても面白かったのですが、 キャラで読む人にとってはレギュラーメンバーが出てこないのは物足りないかも知れません。 ・デルフィニア戦記/茅田砂胡/中公文庫(元は中央公論新社c★novels fantasia) 異世界から落ちてきた少女剣士リィと、自分の国を追われた青年ウォル。 居場所を失った2人の自由戦士が大国デルフィニアを奪い返し、戦乱の中を生き抜いていく物語。 ちょうど今は文庫版が出ていますので、 読んだことのない人はこれを機会に是非是非読んでみて下さい。 全18巻とちょっと長いですが、大丈夫、読み始めたら最後まで止まりません。一気読みです。 シリアスな戦記ものとして読んでも良いですし、 平和な時期の会話に脱力したり、メランコリックな心理描写に心酔したり、 はたまた男装のリィや銀髪の侍女シェラの耽美な雰囲気を楽しむのもありじゃないかと思います。 思いっきり笑えて、泣ける作品です。 ・missing/甲田学人/電撃文庫 作者の深層心理学や民俗学の知識を駆使した人間科学的sf。 設定が素晴らしく、精神世界が本当の意味で精神の世界になっています。ライトノベルもとうとうここまで来ました。 作品としては「dクラッカーズ」の方が先行していましたが、 深層心理学的な精神世界観というマニアックな設定があっても売れるということを示した点で 「missing」の功績は大きいと思います。 元ネタを知ってしまうと、ひねりが少なくて知識の受け売りの感じがしなくもないですが、やったもん勝ちでしょう。 ・ストラグル・フィールド/榊一郎/ファミ通文庫 「ストレイト・ジャケット」を上回る重苦しさで、作者のダークな面を垣間見せる怪作。 第1巻「鏡の中の戦魔」は「ドラゴンズ・ウィル」と並ぶ榊一郎さんの最高傑作だと思うのですが、 明るいキャラがいないからでしょうか、全然売れませんでした。 打ちきりになってしまったようで残念です。 余談ですが、榊一郎さんが同人で出している「英雄衍義」という作品もダーク&ハートフルで良いですぞ。 諸般の事情で富士見ファンタジア文庫から出せなかった作品です。 ・キャラねっと/清涼院流水/角川スニーカー文庫 ミステリーをほとんど読まないので偉そうなことは言えないのですが、 ミステリーというのは、途中で読者にヒントを見せて推理させ、 最後にあっと言わせるトリックを披露するものであるべきだと思っています。 またファンタジーでミステリーをやるならば、ファンタジーと現実世界での違いを明確にし、 魔法や呪文でどういうトリックが可能なのか読者に考えさせるべきです。 「キャラねっと」は私が読んだライトノベルのなかで、初めてちゃんとファンタジーでミステリーしている作品でした。 この作者の作品はこれしか読んだことがないのですが、 自分が書くファンタジーとは何かミステリーとは何かを意識している、良い作家さんだと思います。 ・学校を出よう!/谷川流/電撃文庫 作者は「涼宮ハルヒ」と「学校を出よう!」で同時デビューした訳ですが、 「涼宮ハルヒ」は人気作になったものの無理にシリーズ化したことで構成にあらが出て、 「学校を出よう!」はシリーズ構成を無難にまとめたものの人気作にならず、 なんともちぐはぐになってしまいました。 「学校を出よう!」の舞台にハルヒのような強烈なキャラがいたらとんでもない作品になったと思うのですが、 そうそう現実はうまく行かないものです。 ですが「学校を出よう!」は地味ながらも、深層心理学をベースによく練られた世界設定を持ち、 切ない心理描写ともうまく繋げています。 谷川流さんは一時のまぐれ当りではなく、良い作品を出し続ける論理的基盤を持っています。 本領が発揮されるのはこれからでしょう。 ・ロケット・ガール/野尻抱介/富士見ファンタジア文庫 宇宙開発に青春を掛ける少女たちを描いた現代sf。 フロンティア・スピリットというか、作者の宇宙へのロマンをこれでもかと詰め込んだ作品です。 訓練やミッション中のぴりぴりとした緊張感と、 それに立ち向かっていく主人公たちのひたむきさが素晴らしいです。 ロケット技術や無重力での運動などの科学考証もしっかりしています。 短編が2年ほど前に発表された後、新作がないのですが、打ちきりでしょうか? ・グラスハート/若木未生/集英社コバルト文庫 女子高生がデビュー間近の気鋭ロックバンドにドラマーとしてスカウトされ、 自分たちだけのオリジナルな音を作っていく青春物語。 もの凄くアクが強い文章で、読む人を選びます。合わない人は1ページ目で止めた方が良いです。 が、電波の波長が合ったらしめたもの。 西条のドラムが、藤谷センセイのベースが、坂本のキーボードが、尚のギターが魂に突き刺さります。 ’03年度に新刊がなかったのが残念です。新刊があれば迷わずお薦めに入れていました。 |
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