総合受付 一般参加 コラム 企画 総合掲示板 リンク集 メール・連絡
企画案内  京都対談  2003限定枠 


葉山透さんの選



▼プロフィール

葉山透
作家。
「ルーク&レイリア 金の瞳の女神」(富士見ミステリー文庫)でデビュー。
現在、電撃文庫で「9s<ナインエス>」シリーズを執筆中。最新三巻は五月十日発売。
ホームページは「lafi.net」

url : http://www.lafi.net/


推薦図書
・「ブラックナイトと薔薇の棘」 電撃文庫 田村 登正 (著)




一般でも参加させていただいているので、限定枠のほうは、限定枠のみの「対象外作品」をメインに5作品挙げてみようと思います。
(以下、敬称は略させていただきます)


★「ブラックナイトと薔薇の棘」 電撃文庫
田村 登正 (著)

「ブラックナイトと薔薇の棘」は、去年読んだライトノベルの中で、一番印象に残りました。
 対象作品の中ではあえてこれ一本に絞ります。
 普通の高校生の日常に起こるちょっとした事件。そこから始まる物語と一つの結末。まさしく正しく青春ドラマです。
 萌えでも燃えでもありませんが、主人公の一人称がとても清々しく、ヒロインの女の子がなんともかわいく、メールで皆が語る素直な言葉たちがまっすぐに胸に響き、久々に純粋なロマンを持った一冊の物語を読んだー! という満足感がありました。
 舞台となる土地の情景描写もこれまたよいのです。都心から国道一号を走って港や中華街のある横浜へ。初めてのバイク二人乗りで女の子を乗せて走る鎌倉、藤沢、国道20号。星々を見上げる野辺山。これ以上書くと興奮のあまりネタバレしそうなので自主規制。
 派手なバトルシーンがなくても、魔法がなくても、超能力も妖怪もお化けも出てこなくても、面白い。こういうライトノベルがもっともっと読みたいと、読み終わった後、心の底から思いました。


★「凶笑面―蓮丈那智フィールドファイル〈1〉」 新潮文庫
 北森 鴻 (著)

 一般ジャンルから一つ。ラノベではありませんが、これはかなりオススメです。
“異端の民俗学者”蓮丈那智と、彼女の助手である「ミクニ」こと内藤三國のコンビが、事件を解決していく本格民俗学ミステリー。
 民俗学小説としてもミステリーとしてもホラーとしても充分に面白いのですが、なによりもラノベ好きさんにオススメなのは蓮杖先生とミクニ君のキャラクター。
 美人で天才でクールに謎解きしていく蓮杖先生は文句なくかっこよく、彼女に振り回される研究室助手ミクニ君はワトソン君のごとく我らが隣人で、このコンビはとても魅力的です。
 短編連作の形がとられていて読みやすいし、民族学という分野も難しすぎず軽すぎない絶妙のバランスで配合されてます。
 シリーズ続編は「触身仏―蓮丈那智フィールドファイル〈2〉」。
 また、北森作品は、キャラが他の作品にゲスト出演していたりもするので(「狐闇」等)、お気に入りの主人公が他の作品で活躍する姿を見るという楽しみもあります。


★「私と月につきあって」 富士見ファンタジア文庫
野尻 抱介 (著)

「ロケットガール」シリーズの三巻目です。
一巻目が「ロケットガール」、二巻目は「天使は結果オーライ」。
ロケットガールシリーズは、「賢くてかわいい女の子」と「sf」が好きな人なら読んで絶対損はないと思います。宇宙に対する憧れやロマンはもちろんのこと、女子高生宇宙飛行士三人組の個性と友情がとても好きです(雰囲気も設定も何もかも違うのですが、この三人を見ていると一条ゆかりの漫画「有閑倶楽部」の、悠里と野莉子と可憐に通じるものを感じます)。
特に三作目「私と月につきあって」は物語もよくできていて、本当に名作だと思います。
どの巻から読んでも大丈夫なつくりになっているので、三冊いっぺんはちょっと、と迷ったら、とりあえず「私と月につきあって」から読んでみるのもいいと思います。


★「クラッシャージョウ〈1〉 連帯惑星ピザンの危機」  ソノラマ文庫
高千穂遙 (著)

 十年音沙汰がなかったのに、いきなり改訂版が出たと思ったら、なんと去年新作が出ました。これはもう、推さないわけにはいきません。二十年以上前に出版されたライトノベル黎明期の金字塔シリーズです。
 時は22世紀、宇宙のなんでも屋である「クラシャー」。
ジョウ(17歳男)、アルフィン(16歳女)、タロス(おっさん)、リッキー(14歳男)、ドンゴ(ロボット)の、超a級クラッシャーチームが宇宙をまたにかけての大活躍。すべてが王道、すべてがザッツエインターテイメント!
 ちなみに劇場版アニメも名作です。原作・脚本が作家本人、キャラデザ・作画監督がイラストレーター本人、声優さんのオーディションまで原作チームが行ったという、原作のイメージを損なわないどころか「原作がそのまま新しい話でアニメになった夢のような映画」。原作を読んで気に入ったら、ぜひ劇場版アニメもどうぞ。dvdが発売されています。


★「魔界都市〈新宿〉」 ソノラマ文庫
菊地 秀行 (著)

 菊地秀行ワールドの原型がここにあります。これも二十年以上前の作品で、後に続く人気シリーズ「魔界都市ブルース」等の面白要素がふんだんに詰まっています。
 主人公である十六夜京也の初期装備は木刀一本。それだけで魔界と化したおどろおどろしい新宿に乗り込むのです。無茶です。無謀です。無鉄砲です。しかしそれで化け物ぞろいの新宿を快進撃しちゃうのだから、爽快感は抜群。菊地秀行ならではの荒唐無稽な面白さも抜群。
 これを書いているうちに、また読みたくなってしまいました。
 ova化もされた作品でこれもよくできているので、興味を持たれた方はこちらも観てみてはいかがでしょうか。
 私の中では、高千穂遥が少年向けライトノベル界のインベーダーゲームなら、夢枕獏&菊地秀行はドラクエとffという感じです。もちろん、ドラクエが指輪物語や数多の神話から影響を受けているように、彼らがすべて一からオリジナルを創ったとはいいませんし、他にもすばらしい作家さんがたくさんいらっしゃいます。しかし、彼らが後の「ライトノベル」に与えた影響は計り知れないと思います。少なくとも私は確実にその中の一人です。


 最後に。
 なるべくいろんなジャンル、時代からと思っていたのですが、ハヤカワやコバルトまで入れることができずちょっと残念。今回入れられなかったものも、これから出会うであろう新しい作品も、次の機会にぜひ……と思っておりますので、このイベントが来年も再来年も続くことを祈っております。
 昔から読書感想文を書くのは大の苦手で、上手く伝えられたかどうか不安ですが、いずれも大好きな作品です。一人でも多くの方に興味を持っていただけたらとても嬉しいです。