総合受付 一般参加 コラム 企画 総合掲示板 リンク集 メール・連絡
企画案内  京都対談  2003限定枠 


ひささんの選



▼プロフィール

ひさ
●side one●管理人。

url : http://www.side-one.jp


推薦図書
・ポストガール2(1〜2巻 以下続刊)
[著者:増子二郎/イラスト:gashin/メディアワークス 電撃文庫]
・さよならトロイメライ(1巻 以下続刊)
[著者:壱乗寺かるた/イラスト:日吉丸晃/富士見書房 富士見ミステリー文庫]
・空ノ鐘の響く惑星で(1〜2巻 以下続刊)
[著者:渡瀬草一郎/イラスト:岩崎美奈子/メディアワークス 電撃文庫]
・されど罪人は竜と踊るiv くちづけでは長く、愛には短すぎて(i〜iv 以下続刊)
[著者:浅井ラボ/イラスト:宮城/角川書店 角川スニーカー文庫]
・王国神話 空から降る天使の夢
[著者:明日香々一/イラスト:かわく/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]




●対象作品からの選出で5冊。

・ポストガール2(1〜2巻 以下続刊)
[著者:増子二郎/イラスト:gashin/メディアワークス 電撃文庫]
 第1回電撃hp短編小説賞受賞作。戦争の傷痕で通信機能が崩壊してしまった地への郵
便配達を生業とする、人型自律機械《メルクリウス》mmf108−41――人間達の言
葉でシルキーと呼ばれている少女の様々な出逢いと心の成長の物語。現在も電撃hpにて
連載されている連作短編スタイルで、一定量が溜まったら文庫化されるという流れ。
 大抵の場合シルキーはひとつの短編にひとつの手紙配達を請け負い、最低でもひとり以
上(主に手紙の受取人)との出逢いを果たす。そんな自分以外の人との触れ合いの中、機
械である彼女は僅かずつの歩みながら、無意識の内に『人間の感情』へと近付くような心
の成長を見せ始める。それは《メルクリウス》という観点から見れば余計で余分な感情で
あり欠陥品扱いされてしまうが、見方を変えれば前例のない確かな可能性とも成り得る。
 この物語の面白さは何か? それは手紙を介し様々な人との触れ合いを通じて、自らの
心とは、そして人間の心とは何かを漠然と考え無意識に求め続ける《メルクリウス》シル
キーの心の成長過程にあります。シルキーが届ける手紙の一通一通が、受取人達とのひと
つひとつの出逢いが、全て彼女の心の成長の糧となってゆく。一人称文体で描かれるシル
キーの感情の機微が、深く静かに染み込むように読み手の心に響きます。静寂で淡白で地
味な印象を持ち合わせているけれど、それはシルキーのキャラクター性を象徴しているか
らで決してマイナス要素とはならず、物語の雰囲気にも非常によく合っている。
 着実に進歩を遂げてはいるものの、まだ自らが行動して求めようとする心に戸惑い翻弄
されているシルキー。隔月発売の電撃hp連載という形を取っているので話のペースは緩
やかですが、今後も出逢いを重ねるシルキーの心がどう成長してゆくのか楽しみです。

・さよならトロイメライ(1巻 以下続刊)
[著者:壱乗寺かるた/イラスト:日吉丸晃/富士見書房 富士見ミステリー文庫]
 第3回富士見ヤングミステリー大賞『井上雅彦賞』受賞作。最近の受賞作群の中では、
新装版でスタートしてから掲げているらしい「love&ミステリー」のテーマを、一番
上手に融合させていて面白く読ませてくれた物語(とは言え著者がそこを意図的に攻めて
描いていたわけではないけれど)。最初の内はあまりに軽薄なノリの軽さでプチ切れそう
だった主人公・冬麻の一人称文章も、学園内で起こった殺人事件の謎を追い始める中盤以
降からは、徐々に一人称の持ち味である感情移入度の高さが効果的に表れて来る。
 そしてこの物語の中で何より絶賛したいのは、殺人事件の真相を冬麻が語り解き明かし
てゆく部分。読み手に悟られないようあの手この手で引っ掛けや落とし穴を仕掛けつつ、
本当の意味での解決まで導いてくれた組み立ての妙に拍手を送りたい。ここは多分著者の
意図通り見事にしてやられた感一杯ながらも、読後感は実に気持ちの良いものでした。

・空ノ鐘の響く惑星で(1〜2巻 以下続刊)
[著者:渡瀬草一郎/イラスト:岩崎美奈子/メディアワークス 電撃文庫]
 昨年12月に開幕したばかりのシリーズ作品。1巻時点では現世界のアルセイフ国の第
四王子フェリオと異世界からの来訪者リセリナが出逢うボーイミーツガール要素に、sf
少々+異世界ファンタジーがメインな物語。かと思いきや2巻目では正ヒロイン扱いだっ
たリセリナや鍵となりそうな来訪者達をほったらかしで、アルセイフ国の王位争奪絡みの
内乱がメインとして描かれている。という感じで実はまだストーリー展開がどう転がって
ゆくか見通しの利かない所が多々見られるけれども、これを引っくり返すと2巻目にして
既に先が気になりまくりで早く続きを読みたい欲求が溜まる一方……となる。特にキャラ
クターの魅力に拠る所が大きいのですが、世界観の魅力やストーリーの魅力など全てに心
奪われました。これは言わば今後の盛り上がりへ期待値を込めての選出という感じで。
 シリーズとしては序盤ながら登場キャラクターが結構多い。にもかかわらず、主要キャ
ラから脇役1人1人まで実に丁寧で掘り下げの利いた書き分けがしっかり成されている。
他シリーズでも常に感じられていた、著者の持ち味とも言えるこの辺の描写のうまさは本
作でも健在。キャラクター同士の絡みとしても見所は多く、とりわけフェリオとウルクが
最高。幼馴染み万歳。他に渋い活躍が光る中年以上のオヤジも魅力的なキャラが多い。
 これまでの所は接点が限りなく遠い、現世界で描かれているアルセイフ王国の権力争い
と横に置かれている異世界からの来訪者達。この2つの大きなポイント――キャラクター
に置き換えるとフェリオとリセリナが、今後のどの時点でどのタイミングで再び交差する
事になるのか? 一番気になるこの部分が描かれるのを楽しみにしつつ続きを待ちたい。

・されど罪人は竜と踊るiv くちづけでは長く、愛には短すぎて(i〜iv 以下続刊)
[著者:浅井ラボ/イラスト:宮城/角川書店 角川スニーカー文庫]
 1巻目が第7回スニーカー大賞『奨励賞』受賞作に当たるシリーズ作品。1巻目では立
ち上がりからその文章表現のかなり意味不明な難解さに、頭がオーバーヒート寸前でおか
しくなりそうでした。それがどうした事か、巻を重ねる度にこの難解さの元凶である戦闘
時の咒式展開描写が癖になるくらい面白く感じられて、一時自分の頭がどうかしたのか疑
いたくなったりもしました。実際このivまで読んでもまだ頭の中で煙が上がる程なのに、
それでも難解な描写ながらどこか抗えない強烈な魅力も多分にあるというのかな。
 また主人公ガユスの泥臭い格好悪さや脆弱さなど、普通の人間とは異なる強力な特殊能
力を有していながら、そう言った彼の醜態も物語の奥深さにプラスされるような凄く人間
味溢れる姿として描かれている。これもまた巻が進む度に、主にガユスの相棒ギギナや恋
人シヴーニャとの微妙な距離での絡みを軸にして良い方向に顕著に表れている。
 前述の通り、もう1巻目の初っ端から『乗れる奴だけ付いて来い!』とか言う拒絶オー
ラ醸し出しまくりな読む人を選ぶ内容なので全力でお薦めしません。好きだからってより
は印象が強烈で忘れられないという意味での選出。もし興味持たれたなら……お試しあれ。

・王国神話 空から降る天使の夢
[著者:明日香々一/イラスト:かわく/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]
 第15回ファンタジア長編小説大賞最終選考作。いわゆるあと一歩で受賞から漏れた作品
ながら、第15回受賞作中のどれよりも心に響き印象に残った物語。
 逃げ出してしまった滅亡の危機に瀕する自らの世界を救うか? それとも故郷を捨て逃
げた先の別の世界で出逢った大切な人と生きるか? ひとりの少女オルフィナが、どうし
ても片方しか選べないこのふたつを天秤に掛け苦悩と葛藤に苛まれながらも、自分とは違
う世界に住む一国の王子ディオンへの想いを重ね、互いの絆を深めてゆくというもの。
 純然たるファンタジーとしては割とどこででも見掛ける事の出来そうな内容で、難しい
事も面倒臭い事も凝った事も奇抜な事も新鮮な事もあまりない。やっている事は非常に簡
単で分かり易い。しかしながらシンプルだからこそ、オルフィナとディオンの触れ合いを
筆頭に深く丁寧に描かれているキャラクター達の感情表現が実に際立っている。この世界
の成り立ちに関しても、比較的ありがちとも思える設定ながら物語の中での見せ方使い方
に、どこか魅力を感じさせてくれるような良さがありました。それと個人的に最も評価し
たい点は、この1冊で書きたい全てを描き切って完結させている事。ほとんど謎や伏線を
残さず1冊で纏め上げているのは見事。受賞作であるのに最初から続編想定で描いている
幾つもの作品より、読了したときの感触はずっとスッキリした気分に浸れました。



 上記以外で。実は入れようか迷ったけど既に有名過ぎてあんまり面白味がないとか、そ
うでなくても多分他の方が挙げるかも知れないと考えつつあえて入れなかった作品達。

・マリア様がみてる レディ、go!(既刊16冊 以下続刊)
[著者:今野緒雪/イラスト:ひびき玲音/集英社 コバルト文庫]
 今更紹介も説明も不要でしょうけど、コバルト文庫に手を出す切っ掛けを与えてくれた
影響と面白くて好きな気持ちは今でも変わらずという事で。対象内ではこれが最良。1年
前は心臓病で拝めなかったであろう由乃の大ハッスルぶり、祐巳の妹への興味、可南子の
妹候補への本格的な名乗りと罰ゲームでの思わぬ可愛らしさが後押し。

・dクラッカーズ7−2 王国―a boy & a girl―(全10巻完結)
[著者:あざの耕平/イラスト:村崎久都/富士見書房 富士見ミステリー文庫]
 全てはひとりの少年とひとりの少女が築き上げた小さな王国が原点の物語。ドラッグ、
密売組織グループの抗争、悪魔召喚……キナ臭い匂いに包まれながら、登場人物の誰もが
様々な意味で自分に課せられた戦いに必死で挑み非日常を駆け抜ける。それでも、やはり
これは最初から最後まで景と梓の物語。最初の1、2巻目こそもう一つな立ち上がりです
が、以降は面白さの加速が完結まで止まらない。対象内全ての中での個人的最高傑作。

・ハーモナイザー・エリオン 大志を抱いた魔法使い(全4巻完結)
[著者:吉村夜/イラスト:ことぶきつかさ/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]
 印象的だったのは主人公エリオンの金に執着した生き様そのもの。1巻には目を瞑って
おく事にして、2巻以降のエリオンに注目。金に貪欲な性格の本質はなんら変わってない
のに、同時に金の大事さや尊さを充分に理解した上で、己の信念を貫く姿勢を見せるよう
になる辺りからもの凄く格好良さが際立っている。最初と最後でこれだけ好感度が激変し
てしまうキャラクターってのも珍しい。そんなエリオンに完結まで惹かれ続けた作品。

・流血女神伝 女神の花嫁[中編](既刊13冊+番外編2冊 以下続刊)
[著者:須賀しのぶ/イラスト:船戸明里/集英社 コバルト文庫]
 外伝扱いながら、これまでとかく謎と秘密に満ちていたラクリゼとサルベーンの真実を
描いたシリーズの核心に迫る内容。対象から外れている後編も含めて本編を凌駕する程の
面白さでした。万が一本編を既読しているのに外伝未読ならば迷わず即読んで欲しい。

・ダーク・バイオレッツ6 常世長鳴鳥(対象外で7巻が16年3月に刊行 全7巻完結)
[著者:三上延/イラスト:gashin/メディアワークス 電撃文庫]
 最終巻が惜しくも対象外だった為に上の推薦枠には入れませんでしたが、前後編の形で
最終巻と繋がって描かれているこの6巻からの手応えは半端でなく強烈。ちょっと捻りを
効かせただけの魔物殲滅劇に面白さが加味され始めたのは、柊美に異変が見られるように
なってから。これは完結に近付く程に面白さが増し続けた物語。明良と柊美が互いに惹か
れ合う姿を描いたシーンは、どれもこれも堪らなく良いものばかりでした。



 こんなとこで。
 他にもあれやこれやあるのですが(特に最も読んでる電撃文庫)、これこそ最も多く選
出されそうなレーベルという気がしたので積極的に入れないでみました……と思って選ん
だはずなのに4作も入ってるなおかしいな。やっぱり読んでる冊数が多いせいか、頭にパ
ッと浮かぶのが電撃文庫ばかりで困った。それらは一般投票に回しておく事にします。