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永山祐介さんの選



▼プロフィール

永山祐介
blowin' in the wind及びmy dear, my lover, my sister! 管理人。

url1 : http://www.netlaputa.ne.jp/~u-suke/index.html
url2 : http://members.tripod.co.jp/immortal/


推薦図書
・バッカーノ!/成田良悟/電撃文庫
・銀盤カレイドスコープ/海原零/集英社スーパーダッシュ文庫
・流血女神伝 女神の花嫁/須賀しのぶ/集英社コバルト文庫
・さよならトロイメライ/壱乗寺かるた/富士見ミステリー文庫
・パートタイムプリンセス/神代創/MF文庫j




・対象作品からのエントリー(五つ程度)
 気に入ったのをまず列挙してみたらきりが無かったので、各文庫からは最大一冊を選ぶことと いう制限を自分で課して選んでみました。

電撃文庫、成田良悟著「バッカーノ!」
 電撃は「悪魔のミカタ」と悩みましたが、「去年の」と言うところに重点を置いてバッカーノ を選択。
 とにもかくにも映画的。目まぐるしく場面が変わり、登場人物や視点が変わり、読者を振り回 した挙句にラストで収束するさまは見事だと思います。
 系統的にはスラップスティックコメディだと思いますが、真面目な部分もあり、その比率や混 ぜ方も上手いと思います。
 次々にカメラワークを切り替えていく構造から、登場人物も非常に多いのですが、それらがか なりメリハリの利いた性格付けをされているので、「あれ、誰だっけ?」となることもなく読め ます。中でもバカップル(文字通りの意味で)、アイザックとミリアは非常に良いです。
 シリーズ内で最もお勧めなのは、やはり一巻。

集英社スーパーダッシュ文庫、海原零著「銀盤カレイドスコープ」
 スーパーダッシュは文句無く「銀盤カレイドスコープ」ですね。
 フィギュアスケートというスポーツを題材にしていながら、変に動作にこだわらず、イメージ で描写を押し切ったところが良かったと思います(序盤は、「ルッツ」とか「フリップ」とか単 語だけで動作の説明が無かったので不安が過ぎりましたが)。動作を逐一解説してはテンポが悪 くなる(スケーティングの爽快感もなくなる)し、かと言って端折ってしまったら何をやってい るのかわからない。そういう中で、いっそイメージにしてしまうのは良い方法だったと思いま す。
 恋愛ものとしても、幽霊であるピートとの、別れを前提とした構成が綺麗でした。ラスト、ス ケートで終わるのではなく、ピートとのシーンで終わるのが象徴的。
 でも、それゆえに三巻は(そしておそらく続くそれ以降は)どこまでも蛇足だと思います。
 ということでお勧めは、vol.2。まあ、一巻二巻で一つの物語なので、本当は区切りようもな いのですが。

集英社コバルト文庫、須賀しのぶ著「流血女神伝 女神の花嫁」
 コバルトからは「流血女神伝 女神の花嫁」。橘香いくのの「有閑探偵コラリーとフェリック スの冒険」も考えたけれど、一つだったらこっちかなと。
 互いにどこかしら孤立していた二人が、出会い、惹かれ、結ばれ、そして道を分かつ物語。そ れを通して、女神について書いてある話でもありますね。
 須賀しのぶさんの小説全般に言えることですが、普段少女小説に手を出さない人にも勧められ ると思います(惑星童話や女子高サバイバルはちょっと違うかな)。
 お勧めは、期間内に発売されていませんが下巻。
 ただし「女神の花嫁」は「流血女神伝」の外伝であることに注意。まあ単独でも読める構造だ と思いますが。

富士見ミステリー文庫、壱乗寺かるた著「さよならトロイメライ」
 富士見ミステリーからは「さよならトロイメライ」。「room no.1301」もちょっと考えたけれ ど、「room no.1301」はインパクト勝負という気がするのでこちらに。
 序盤がちょっと辛いです。超が付くほどハイテンションの一人称に耐えられるかどうかが鍵。 それを乗り越えれば、心優しき人々の青春ものとしてなかなか良いと思います。まだ荒削りだと 思いますが、先々に期待をもてる気がして楽しみです。

mf文庫j、神代創著「パートタイムプリンセス」
 mf文庫jから「パートタイムプリンセス」。「ラーゼフォン」もあったけど、期間内は外伝だ けだったのでこちらに。
 とにもかくにもアイディアの勝利だと思います。この世界に住む主人公が、異世界のヒロイン と精神が入れ替わってしまうという設定。互いに触れること能わず、それどころか直接話をする ことも出来ないというジレンマ。また、それが逆に互いの気持ちを一端落ち着けてからコミュニ ケートすることにも一役買っていて、実に上手く働いていると思います。
 そして住む世界が違うが故に必定な別れ。
 綺麗な「ゆきて帰りし物語」だったと思います。お勧めは一巻。


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・期間問わずのお勧め作品

電撃文庫、うえお久光著「悪魔のミカタ」
 一巻の前半までと、それ以降でがらっと雰囲気が変わる本です。
 軽い雰囲気の下に、ひとつの望みのためには全てを捨てる覚悟を問うてくる、そんなお話で す。
 また、刊行ペースの速さも魅力。

富士見ファンタジア文庫、新城カズマ著「狗狼伝承」
 台詞がことごとく突き刺さる感じの和風ファンタジー。
 最愛の許婚を「狗狼」という物の怪に奪われた少年、小笠原周防。時念の太刀を振るいつつ、 独り狗狼を追い続けていた。
 「いつまで待っていようか?」と嘲笑った狗狼。孤独な闘いの中で、彼は常に自らを苛む。
「果たして間に合うのか、もう手後れなのか」と。絶望的な状況の中、ただ一人「信じてる」と 言ってくれた婚約者のため、迷いながらも少年は闘い続ける……といったお話。
 問題はここ最近続刊が出ないことなのですが、他の作品の後書きで、ちゃんと書く意志がある ように書いてあったので一安心。

富士見ファンタジア文庫、新城十馬著「蓬莱学園の初恋!」
 南海に浮かぶ超巨大学園。その全校生徒を巻き込んだ「初恋」の物語。
 とにもかくにもハチャメチャなスケールで、勢いよく突き進んだと思いきや、意外に重い展開 になり、そして最後のシーンで涙する、そんなお話です。
 元々メイルゲームだったのですが、それを知らなくても充分楽しめます。

新潮文庫ファンタジーノベル・シリーズ、岩本隆雄著「星虫」
 夢と希望と冒険と。後に朝日ソノラマから再版された名作ジュブナイルsf。
 空から降ってきた大流星群が発端となって起こる、世界中を巻き込んだ七日間のお話です。

朝日ソノラマ文庫、谷山由紀著「こんなに緑の森の中」
 心に柔らかく響くような、優しいお話。
 ひと時のぬるま湯のような空間で、傷が癒えるまで羽を休める人々のお話です。「そのままで 良いんだよ」と言われているような気がしました。
 多分、後から振り返った時に、僕の心の中で何かの変化を起こしてくれた本です。

角川スニーカー文庫、小林弘利著「バード・ウォッチング・エピソード」
 「カーテンコールは青空に」「ラヴ・コールが聞こえますか」「歌声でコール・ミー」の三作。
 僕はこの作者さんが大好きで(ナディアのノベライズとか、オリジナルでないもの以外は)全 部集めましたが、その中でも最も好きだったのがこのシリーズ(コバルト文庫の「童話を胸に抱 きしめて」シリーズとどっちを推そうか少し迷いましたが)。
 何があっても必ずハッピーエンド、というのが信条の作家さんで、優しくて綺麗な、まさしく 童話めいたお話です。
 このシリーズは、歌を歌えないツグミが姿を変えて人間に歌を習いに行くというお話。そこで 大好きな人に出会う話でもあります。三作通じて、とても綺麗なラブストーリーだったと思いま す。タイトルも好きでした。

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以上です。
「バード・ウォッチング・エピソード」はきっと僕くらいしか入れないだろうな、 というのが密かな期待です(苦笑)。