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浮世亭風流24号さんの選



▼プロフィール

浮世亭風流24号
浮世亭風流24号の水槽管理人。

url : http://www6.plala.or.jp/furyu/


推薦図書
・イリヤの空、ufoの夏/秋山瑞人/電撃文庫
・dクラッカーズ/あざの耕平/富士見ミステリー文庫
・マルドゥック・スクランブル/冲方丁/ハヤカワ文庫JA




・イリヤの空、ufoの夏/秋山瑞人/電撃文庫
この作品はライトノベルという枠に限らず、風流の2003年読了本ベスト作品です。
夏休み最後の夜、学校のプールに忍び込んだ浅羽直之は、伊里野可奈と名乗る一人の少女に出会った。
主人公浅羽のなんとも力の抜けたユルさが心地よく、ちょっぴり懐かしい雰囲気でボーイ・ミーツ・ガール・ストーリーが繰り広げられるものと思いきや…。
新聞部部長水前寺、クラスメイトの晶穂、浅羽の妹夕子という魅力的な登場人物による学園ラブコメが、秋山瑞人独特の文体で描かれ、その独自の世界に引き込まれます。
そして、物語の中に少しずつ見え隠れする切なさと、園原基地とufoの秘密が明らかになった時、予想していなかったありえない展開にやられました。前半までの笑いと後半の胸苦しさのギャップが違和感なく繋がっているのが凄い。
ラストは大号泣。まさに秋山マジックです。

・dクラッカーズ/あざの耕平/富士見ミステリー文庫
帰国子女の姫木梓は、幼馴染の物部景と再会するが、景にはカプセルと呼ばれるドラッグに関する噂があった。
ストーリーも面白かったですが、なんといっても魅力的な登場人物同士の会話が素敵な物語でした。最終巻での千絵とベルゼブブの会話(てーゆーか、討論)は圧巻ですし、水原と千絵の夫婦漫才は笑えるし、ほとんどしゃべらない景が久美子にはちゃんと話したり、ベルぱーが久美子相手に語る場面も好きですし。シンプルではありますが、良いこと言ってたりします。
人は一人では自分になれません。誰か他の人と対峙することによって、初めて自分自身が“在る”のです。そんなこんなも考えさせられた作品でした。

・マルドゥック・スクランブル/冲方丁/ハヤカワ文庫ja
電子干渉能力を持つ人工皮膚をまとって死の淵から再生した少女娼婦バロットは、委任事件担当官にしてネズミ型万能兵器であるウフコックの相棒となった。
なんといってもカジノでのブラックジャックのシーンの描写が素晴らしい。延々とブラックジャックをやっているだけなのにも関わらず、単に飽きさせないだけでなく、ぐいぐいと引き込んでいく圧倒的な筆力には感嘆させられます。
しかし、リストにあったので挙げましたが、風流的にはこの作品をライトノベルと呼ぶのはいかがなものかと…。

風流これまでライトノベルと呼ばれる作品をほとんど読んでいなかったのですが、ネットで知り合った人たち(主に若者中心)に薦められて、最近はちょっとずつライトノベルも読むようになってきました。
風流の少年時代はライトノベルという言葉そのものが存在せず、少年少女向けにはコバルトのジュニア小説とかソノラマのジュヴナイルsfとかが出ていた程度ではなかったかと。あとは翻訳モノで少年少女探偵小説とかを読み漁ったものでした。
しかし、大人になるにつれ、誰しもそうした子供向け(とされる)小説では物足りなくなるのは当然で、簡単な言葉で当たり前のことが普通に表現されているものよりも、自分の知らない言葉で自分と異なる新しい考えが書かれているものを好んで読むようになっていったのでした。
そうして足が遠のいているいるうちに、いつのまにかライトノベルと呼ばれるジャンル(?)が展開されるようになっていたことには気付いてはいたのですが、書店では一般の小説とは別コーナー(コミックの隣とか)に配架されていたり、おじさんには手に取りにくいイラストの表紙であったりして、なかなか読んでみるところまでいかなかったのが実情です。
ジャパニーズ・コミックが一大文化を形成している現代、ライトノベルは単に子供向けにアレンジされた小説という位置づけではなく、漫画と小説のメディア・ミックス化とでもいうべき形態への発展を遂げてきたようにも思われます。
そして実際に読んでみて思うことは、「ラノベ侮り難し!」です。
確かに「ライト」という言葉の通り、軽くサクサクと読めるのは小説を読み慣れていない現代の若者には利点なのでしょうが、おじさんとしてはそれだけでは頭を休めるにはいいけど、ちと歯応えが足りないというのが本音でした。
そんな中で、今回おすすめ作品として紹介した3作は、好みはあるでしょうが、どれもライトノベルという枠を取り払っても「すごい!」と思えるものです。他にもライトノベルとして面白いものは沢山あったのですが、今回は風流の中で『イリヤの空、ufoの夏』が、あまりにも突出して素晴らしかったので、並べて挙げるのは控えさせていただきました。