マルドゥック・スクランブル The Third Exhaust-排気
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まさしく、「すごい!」という言い方をするのにふさわしい作品。
SF的ガジェットもさることながら、「SH」の韻律により生み出されるこの世界独特の雰囲気が作品を変えがたいものにしている。 それは必ずしも話のメインではないし、注目すべきところはいくらでもあるのだけど、こんな観点から言ってもこの小説は冲方さんにしか書けないと言える。少なくとも僕はそう思う。
「ちくしょう(ガッシュ)」
中でもこの言葉が深く印象に残っている。 まあ、それはそれとして。
1、2、3、と三冊続く中で選ぶなら、やはり最高の盛り上がりを見せる三巻がいい。それも中盤アシュレイとのブラックジャックのシーンが一番だ。 スロット、ポーカー、ルーレットと、それまで、相手のことを心理、動作、呼吸、様々な側面から読み、対抗することでチップを増やしてきたバロットとウフコックが、それまでの方法ではまったくもって理解不能な、わけのわからない状態へとたたき込まれる。 何手何十手何百手、ブラックジャックにおいてそれだけの数のドローが繰り返されればどう思うか? それも偶然ではなく、間違いなく相手の恣意によるものでの場合だ。 実際の話、そんなことはあり得ない。 そう。そのあり得ないことが起こるからこそ、読者は足下を崩されたような気分になる。 このときの絶望感がとんでもない。 そして、「だからこそ」、この絶望をひっくり返すときのシーンほど心震わされるものは無い。 バロットとウフコックという異なる存在が、どのようなコラボレーションでこれをひっくり返すのか。 このシーンの一行一句一字、そのすべてを味わうためにこそ、この小説はあったのだ。
過言だとは思うけれど、そこまで言い切ってしまっても許される程のものがここにはある。 |
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ハイウイング・ストロール
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今年度読んだ本も、まあそれなりにそれなりの数があったわけで、すごかったとか、感動したとか、そういうものはやはりいろいろありました。 それで、その中で一番面白かった本が何か、という観点では、僕は小川一水さんのこの作品を推します。
ゲームみたいだった。 簡単に言うとそんな感じです。 RAGNAROK ONLINEのことを言いたいわけではないので注意。 いや、確かに小川一水さんはROにはまっていたわけだし、明らかにROを下敷きにしているし、まあ世界の設定的にはMMORPGみたいな物なんだけど。僕が言いたいのはそういうことではなく。まさしくゲームの様に楽しめた。ということ。 やはり面白さの基本は、成長するということだなあ、とか思う。
ファミコンのころのドラクエみたいに、レベルが一つあがる度に新たなる地平が見えてくる。新しい土地に移るたびに、新しい街がそこにはあり、そこでしか会えない人々がいる。そしてその土地にしかいない浮獣(この作品の中のモンスターみたいなもの)が次の試練を与え、それに対抗する新しい策を考えていく。 主人公と読者が同じ速度で世界を知り、できることを増やし、だんだんと活躍できるようになるということが大事なんだろう。最初のころの主人公が何も出来ない少年だからこそ、後半の成長ぶりは快感と言ってもいいくらいに心地いい。そう、このお話にはカタルシスがある。
そんな感じで、ハイウィング・ストロールをすごく楽しんで読んでおりました。 いえ、企画で忙しくて三月中これ以外の本が読めなかったせいではないはずです。 きっと。
あ、あと、SFがよみたい! を読んで期待していたほど「♪」が出てこなかったのが心残りって言えば心残りですね。 |
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