イリヤの空、UFOの夏 その4
|
|
「すごい作品です」
秋山瑞人が贈る、ボーイ・ミーツ・ガール ・・・という風な広告でしたが 読んでみると、もう鬼才としか言いようがありません。 とにかく、すごい。
主人公の浅羽直之は、UFOの夏を経験します。 それは新聞部の部長、水前寺邦博の超常現象マニアな趣向が季節ごとにコロコロ変わり、そしてこの夏は「UFO」と相成ったから。 そして、伊里野に出会ったから。
秋山瑞人氏の作風として、「ほのぼのとしているのにあるとき突然、急激な物語の変容」と、感じられるものがあります。 この作品ではそれが顕著に現れている。 浅羽とイリヤが「日常」を過ごしているときに突然現れる「非日常」。 その急激さは「怖い」と感じてしまうほどです。
そして、主人公浅羽の葛藤の描写。 これはもう鬼才秋山瑞人でしか描けないだろう、すごさ。 凶悪的な勢いを持って読者に鬼気迫ります。
また個人的に、こういう「日常」と「非日常」が混じり合っている作品というのは、とても読むのがつらい。 そして読み終わったあとは一週間は頭を離れなかったし いまでも「トラウマ」として心に残っているところがあります。 だが、この「トラウマ」は享受できるものであるし 心に作品が残るということでは、一番深く刻み込まれました。 この作品を読めたことは、本当に幸せなことだったと思います。
|
(この作品の書評を見る)
|
Dクラッカーズ7−2 王国−a boy & a girl−
|
|
本を読んでいてよかった。 そう思う瞬間があり、そう思わせてくれる作品がある。 本を読むのはそういう作品に出会うため、と言っても過言ではない。 そしてこの作品は間違いなく、私が待ちこがれた作品であった。
「素晴らしい作品です」
主人公、物部景。ヒロイン、姫木梓。 二人は幼き頃に出会い、別れる。 そして歳月を経て、二人は再び出会い、そして物語が始まる。
景と梓は「過去」でつながれ、「過去」に離される。 だが二人は「過去」を埋めて、互いを見つけ合う。 それを見守るのは読者たち。 この二人の関係は巻を追うごとに魅力を増してゆく。
そしてこの作品で、最も注目すべき人物。それはもちろん、海野千絵。 特に7-1と7-2の中の彼女の言葉。 素晴らしい、この言葉に尽きます。
この小説にはいわゆる「ジャンキー」がいっぱい出てきます。 それらのジャンキーはカプセルのみ、虚構を選んでゆく。 彼らにとって「虚構」と「現実」、この二つの価値の差はなくなってきている。 いや彼らに限ったことではない。 今や「現実」では、価値観は相対化し、選択肢ばかり徒に増え、本当に大切なものを見つけれなくなってきている。 誰もが自由の海に放り出され、その大きさに途方に暮れている。 そして、その自由の海を回避する方法として示される『王国』という名の「虚構」。
だが彼女は「現実」を選ぶ。 なぜなら彼女は、ガラス玉ではない燦々と輝く宝石を見つけたから。 そして、宝石を見つけた彼女が発する言葉は「信念」という「輝き」がある。
私個人にとって彼女の言葉はこれから先、人生を歩んでゆく上でとても大事なものになると思います。
そして願わくば、この物語が私の中で宝石として輝き続けるように。
|
(この作品の書評を見る)
|
魔術士オーフェンはぐれ旅(20) 我が聖域に開け扉(下)
|
|
「一番好きな作品です」
オーフェンはぐれ旅はこの巻で終わります。だからこの本に投票したのは「オーフェン」というシリーズ全体のことを指し示していると思ってください。
オーフェン、クリーオウ、マジク。この三人は「旅」をします。 それはこの小説の中の世界に大きく関わる旅であるのと同時に、この三人が成長する旅と言ってもいいかもしれません。 特にオーフェン。彼はこの旅の中でとても成長します。
昔の塔にいた頃の欠陥品としての自分。オーフェンはそんな自分と向き合います。 チャイルドマンという超人の下で育った彼には、自分がひどく非力な存在であることを知っています。 ただ、彼は欠陥品であることを知るのと同時に、自分は未完成品であるということがわかります。 そして彼は、過去の自分の愚かさを認めるとともに、過去のしがらみから解放されます。
そして、物語の終盤である第二部。 聖域との戦いが回を重ねるごとにあらわになってゆく第二部ですが、大きく問題となるのは「絶望」です。 女神との戦いが近づくにつれて、誰もが「絶望」していきます。 だけれどもオーフェンは決して「絶望」しません。 神の不在、奇跡の皆無。だけれども彼は絶望しません。 そして彼は言います「奇跡はないかもしれないが、それと同じなにかがある」と。 その「なにか」は何であるかはわかりません。 ただ、彼はそれを見つけることができたと思います。
こうして彼、オーフェンは成長します。とても、とても、大きく。
また、クリーオウとマジクについては、成長する、という他にオーフェンとの関係の中で見出されるものがとても興味深いです。 オーフェンが、奇跡の代わりなにかある、と考えるようになったのは何より、クリーオウの影響でしょう。 マジクが一人前の魔術士になりたいと切望するのを、オーフェンは優しく見守ります。
これらをありきたりな「ファンタジー的な成長」と掃いて捨てるかもしれませんが、そんなことが気にならないほど彼らの生きる姿はかっこいいです。
オーフェンは自分で正義の味方なんてつもりはない、と言います。が、自分で見たものを判断し、自分を信じて突き進む姿はかっこよく、確かに彼は超人ではないかもしれませんが、自分にとって彼は「ヒーロー」でした。 それが自分個人のこの作品の魅力です。
|
(この作品の書評を見る)
|
A君(17)の戦争6 すべてはふるさとのために
|
|
「とても気になる作品です」
主人公、小野寺剛士(17)がある日異世界に飛ばされて「魔王」となってしまう。 けっこうありふれた設定から始まる作品だが、とてもおもしろい。
キャラの関係が徐々に発展していくのは、物語が進んでる、って感じで楽しいし 戦争描写の場面では、とてもメリハリが利いていて面白いし また決して、主人公の思いのままにならないところもいい。
そして、この作品を読んでいて一番表に出されているのは、やはり「テーマ」だと思います。 キャラクターたちも生き生きしてとても魅力にあふれているのですが そこに作者もまた、「キャラ」として成り立っている。 文体は、途中で作者が茶々入れたりする、などの奇妙な文体であり そしてその文体によって作者は作品の世界に入ってゆき、物語を解説したりします。
とても興味深かったのが、「ライトノベルは成長物語」と作者が言い切ってしまったということ。 確かにこの作品には主人公を成長させる仕掛けが所々に配置されていますが こうもあからさまに創作者の意図をあらわにするのには驚きました。
今後の展開がとても気になる作品です。
|
(この作品の書評を見る)
|
ヒトクイマジカル 殺戮奇術の匂宮兄妹
|
|
「今後が楽しみな作品」
戯言シリーズ6作目。 「ぼく」こと”戯言遣い・いーちゃん”。今回は魅せます。
もう、これでもかっ!ってぐらいマイナス思考(この言葉ではニュアンスは伝わりきらないが・・・)な主人公・いーちゃんですが 今回は事件をきっかけに成長します。
印象としては今回、異様に面白い。 笑える「おもしろさ」が所々にある。 読んでる途中に違和感を覚えるほど。
そして事件をきっかけに読者は突き放されてしまう。 これはいつも感じます。突き放されてしまうのです。 だけれども今回は前半が楽しかっただけに、心に重くのしかかる そしてまた主人公はマイナス思考のまま・・・。
でも今回は魅せた。 みいこさんといーちゃんのやりとり、燃えます。 もうこれは体の芯から痺れてしまいます。
そして主人公・いーちゃんは成長する。 ほんの少しだけれども、成長する。
6作目までほとんど変化のなかった「物語」が今、動きはじめる。 とても期待しております、この「戯言シリーズ」。 早く次が読みたい一冊です。
|
(この作品の書評を見る)
|
Dクラッカーズ7−2 王国−a boy & a girl−
(イラスト評)
|
|
新装して大きくなった富士見ミステリーの表紙 とてもいいと思います
だけれども、この本の中で一番好きな絵は最初の口絵です。
とても暖かい感じがして、とてもいいです
|
(この作品のイラスト評を見る。)
|
魔術士オーフェンはぐれ旅(20) 我が聖域に開け扉(下)
(イラスト評)
|
|
イラストにはあんまり気を配らない自分だが 表紙をめくってすぐの口絵には驚嘆してしまった。
そしてこの作品の中におさめられているイラスト どれも素晴らしいものだった。 笑えたり、驚いたり、優しかったり、いろいろなものがそこにはあった。
これは「草河遊也」で「秋田禎信」で「オーフェン」でなければ味わえないものだったと思う。
素晴らしい作品にしてくれた草河遊也先生のイラストに、とても感謝しています。
|
(この作品のイラスト評を見る。)
|