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「一番好きな作品です」
オーフェンはぐれ旅はこの巻で終わります。だからこの本に投票したのは「オーフェン」というシリーズ全体のことを指し示していると思ってください。
オーフェン、クリーオウ、マジク。この三人は「旅」をします。 それはこの小説の中の世界に大きく関わる旅であるのと同時に、この三人が成長する旅と言ってもいいかもしれません。 特にオーフェン。彼はこの旅の中でとても成長します。
昔の塔にいた頃の欠陥品としての自分。オーフェンはそんな自分と向き合います。 チャイルドマンという超人の下で育った彼には、自分がひどく非力な存在であることを知っています。 ただ、彼は欠陥品であることを知るのと同時に、自分は未完成品であるということがわかります。 そして彼は、過去の自分の愚かさを認めるとともに、過去のしがらみから解放されます。
そして、物語の終盤である第二部。 聖域との戦いが回を重ねるごとにあらわになってゆく第二部ですが、大きく問題となるのは「絶望」です。 女神との戦いが近づくにつれて、誰もが「絶望」していきます。 だけれどもオーフェンは決して「絶望」しません。 神の不在、奇跡の皆無。だけれども彼は絶望しません。 そして彼は言います「奇跡はないかもしれないが、それと同じなにかがある」と。 その「なにか」は何であるかはわかりません。 ただ、彼はそれを見つけることができたと思います。
こうして彼、オーフェンは成長します。とても、とても、大きく。
また、クリーオウとマジクについては、成長する、という他にオーフェンとの関係の中で見出されるものがとても興味深いです。 オーフェンが、奇跡の代わりなにかある、と考えるようになったのは何より、クリーオウの影響でしょう。 マジクが一人前の魔術士になりたいと切望するのを、オーフェンは優しく見守ります。
これらをありきたりな「ファンタジー的な成長」と掃いて捨てるかもしれませんが、そんなことが気にならないほど彼らの生きる姿はかっこいいです。
オーフェンは自分で正義の味方なんてつもりはない、と言います。が、自分で見たものを判断し、自分を信じて突き進む姿はかっこよく、確かに彼は超人ではないかもしれませんが、自分にとって彼は「ヒーロー」でした。 それが自分個人のこの作品の魅力です。
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