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高空 昴

推薦図書
・ AHEADシリーズ 終わりのクロニクル 1<上>
・ イリヤの空、UFOの夏 その4
・ フルメタル・パニック!(12) 踊るベリー・メリー・クリスマス
・ 導きの星 IV 出会いの銀河
・ されど罪人は竜と踊る II 灰よ、竜に告げよ


イラスト評
・ AHEADシリーズ 終わりのクロニクル 1<上>
・ イリヤの空、UFOの夏 その4
・ キーリ 3 惑星へ往く囚人たち
・ BLOODLINK 夜光
・ ヒトクイマジカル 殺戮奇術の匂宮兄妹




AHEADシリーズ 終わりのクロニクル 1<上>
   川上稔氏といえば、その独特の世界観とキレ味のある文体が特徴的な「都市シリーズ」の作者として有名だと思う。「都市シリーズ」はライトノベルの中にあって、一際異彩を放つ世界観ゆえに、読者を選ぶ作品が多かったように思う。
 物語の面白さに触れる前に、その世界観に適応できるかどうか、そんな印象がある。
 先に断っておくが、都市シリーズの物語の筋はきわめて王道的であり、胸を熱くするエキサイティングな物である。ここで言いたいのは、川上氏が描き出す世界観が独特であるということだ。
 そんな都市シリーズの書き手が新たに描き出すシリーズ「AHEADシリーズ」の第一巻が、この「終わりのクロニクル1<上>」だ。
 まず第一印象は「分厚い」ということ。
 川上氏の作品は基本的に長い。一般的なライトノベルの倍、時には三倍の分量で書かれている。この作品もまた、例外ではない。
 読書初心者はここで怖気づきがちだが、それでこの作品を避けるのは早計だ。
 断言しよう。
 「AHEADシリーズ」は面白い!
 この分厚さが、読んでいく内に期待と快楽になるほど面白い。
 文体のキレ味は健在であり、描写や表現も丁寧だ。文の区切りや改行もテンポよく、とても読みやすい。長いのは、この物語を「面白く書く」のにそれだけの量が必要だというだけに過ぎない。
 そう、この作品は「分厚い分だけ面白い」という一級のライトノベルなのである。強烈な個性のキャラクター達が軽快かつ重厚に動く様は読者を飽きさせない。
 世界観自体はやはり独特だが、都市シリーズと比較すると、はるかにとっつきやすい物に仕上がっていると思う。
 川上作品の入門書としても最適かもしれない。

 個性的かつ面白く、それでいて「王道的」な作品が読みたい方は、ぜひ川上作品を体験してほしい。
 その際には、私はこの「終わりのクロニクル」を推薦しよう。
(この作品の書評を見る)



イリヤの空、UFOの夏 その4
   秋山瑞人氏の作品について語る際、まず口にしてしまう点が「文章の疾走感」についてだ。
 秋山作品は文章が「速い」。これは表現が簡素であるとか、改行が多いとか、展開があっさりしているという意味ではない。秋山作品はむしろ表現は濃厚であり、改行は適度で、展開も緩急に富んでいる。
 では「文章が速い」とはどういう意味なのか。
 それは「読者の感覚を加速させる」文章であるという事だ。氏の物語は、読者を掴んだが最後、圧倒的な牽引力で一気にラストまで引っ張ってくれる力に満ちている。
 氏の著作品である「E.G.コンバット」しかり、「鉄コミュニケイション」しかり、「猫の地球儀」しかり。全ての作品に言えることだが、その形態はジェットコースターに似ている。
 クライマックスまで持ち上げて持ち上げて、後は最高速度で叩き落す。この落下にも似た読書感に抵抗は出来ない。そこにはスリルと爽快感が宿るのみだ。
 さて「イリヤ」である。
 この四巻は、そんな「落下」の巻である。三巻かけて上昇を続け、溜め込んだエネルギーを一気に吐き出した、急転直下のクライマックスの本だ。
 速い。
 とてつもなく「速い」。
 止まれない物語を読みたい方は、ぜひ、一巻から読んで欲しい。読み終えた時、抱く感想は「面白かった」の一言である事を保証しよう。
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フルメタル・パニック!(12) 踊るベリー・メリー・クリスマス
   「フルメタル・パニック!」シリーズは、全体を通して非常に高水準なライトノベルである。笑いあり、熱血あり、萌えあり、感動あり。そして読みやすくテンポのいい文章が冴えている。
 ライトノベルというジャンルに求められる要素を、ここまでバランス良く装備した作品は珍しいと思う。そして、長編と短編集、両方において面白さを維持し続けている点も素晴らしい。
 特に評価したい点は、フルメタル・パニックの長編は、巻ごとにきちんと「物語としての山場」がある点だ。人気シリーズだからと、ただ続けるためのダラダラとした展開をしていない。それゆえに面白く、続刊に期待を抱く事ができ、そして読み応えを得られるのだ。
 単純な勢いやお約束的マンネリズムに頼らない、確かな面白さがある作品である。
 この12巻もまた、そうしたシリーズを担う一冊だ。
 ぜひ、シリーズを通して読んでみて欲しい。
(この作品の書評を見る)



導きの星 IV 出会いの銀河
   この作品を読んだ時、抱いた感想は「面白いSFに出会えた」の一言だった。
 SFの面白さとは何なのか。
 千差万別の答えが噴出しそうな問いだが、私個人は「壮大なスケールで語られる点」であると思う。通常の所謂「文学作品」にはない壮大さ、舞台の大きさ、それこそがSFというジャンルの武器なのだと思う。
 この「導きの星」は、一言で言えば「惑星育成ノベル」である。主人公は、知的生物が未発達な惑星に文明を育てることを任務とした役人であり、この物語はそんな主人公が「文明を育てる」様を描いている。
 惑星を育てる。なんとも大きなスケールだ。
 豊富な知識に基づいて描かれる惑星成長の様子は、濃厚であり、非常に面白い。文明が芽生え、新技術が発達し、知的生物たちが文化を作り上げていく様子は、子供じみた言い方だが「ワクワク」する。
 全四巻のシリーズだが、冊数に反して、大きな楽しみに満ちていたと思う。
 お薦めの一作だ。
 
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されど罪人は竜と踊る II 灰よ、竜に告げよ
   やや低迷気味な印象があるスニーカー文庫において、久しぶりに個性と面白さに溢れた作品が出た。そんな感想を抱かせたのが、この「されど罪人は竜と踊る」シリーズだ。
 怒涛の如き化学・物理知識で描写される術式(魔法のようなもの)は圧巻の迫力であり、程よく毒のあるキャラクター達の会話や行動は子気味がいい。よくあるライトノベル系ファンタジーの皮を被っているが、中身の方は、やや荒削りながら活劇小説として高い水準に達していると思う。
 シリーズの中でも私が最も好むのが、この二作目だ。
 都市全域を舞台としたシティ・アドベンチャーといった内容の本作は、登場人物たちの心理や思惑が交錯した、スピード感溢れるサスペンス・アクションと言えるだろう。
 生きたキャラクター達が織り成す、壮絶な戦いをぜひ楽しんで欲しい。
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AHEADシリーズ 終わりのクロニクル 1<上> (イラスト評)
   ライトノベルにおいてイラストは重要な要素だ。
 作品全体の雰囲気は、文章・イラスト・装丁の三者が揃って初めて完成するものだと、私は思っている。
 そういう観点から考えると、さとやす氏のイラストは、まさにライトノベルにおけるイラストの「ひとつの完成型」だと思う。アニメ調のすっきりとした絵柄や、鮮やかな色彩はもちろんのこと、物語としっかりリンクした遊び心たっぷりの挿絵は素晴らしいの一言。
 著者や編集と綿密に打ち合わせをしているのだろう。
 「挿絵が欲しいところに絵があり、またその絵が欲しかった絵」であるところなど、実に心憎い。
 ただでさえ面白い川上作品をさらに面白くしてくれる絵師、さとやす氏に一票を投じたい。

 しかし、さとやす氏の技量が、都市シリーズ「機甲都市・伯林5」から劇的に上達していると感じているのは私だけだろうか。この調子でもっともっとステキな絵を描いて欲しいなあ。
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イリヤの空、UFOの夏 その4 (イラスト評)
   イラストに関しては四作品まで真面目な意見で投票しました。
 なので、一作品だけは、完璧に趣味で選びたいなあと。
 そういうわけで「はいてない」駒都えーじ氏に一票。
 もー、こりゃ、完璧に個人的趣味です。
 なんかね、もう、だめ。KOっす。抗いようのない微妙な本能的衝動に押されて投票です、はい。

 なんか、いいよね。
 理由もなく。
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キーリ 3 惑星へ往く囚人たち (イラスト評)
   作品に非常にマッチした絵柄だと思う。
 どこか寂しげでありながら、確かな存在感を感じさせる絵ではないだろうか。シリーズを通して、その印象は変わらない。
 もしこの絵でなければ、キーリという作品の印象も、もう少し違ったものになってしまっていたと思う。そういう意味で、ライトノベルのイラストとして素晴らしいのではないだろうか。
 やはり「作品を演出し、より面白くする」絵こそ、ライトノベルのイラストとして正しいと感じる。
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BLOODLINK 夜光 (イラスト評)
   非常に感覚的な意見だが、とにかく表紙にぐっと惹きつけられた。夜の街を背後に立つ主人公と、淡く青色に光るヒロインの一枚絵は芸術的だと思う。
 単純に見惚れたという点で投票です。
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ヒトクイマジカル 殺戮奇術の匂宮兄妹 (イラスト評)
   竹氏の絵は、とても目をひく。
 鮮やかな色使いのポップ・アート調の絵で、タイトル・ロゴと相まって、何とも言えない存在感を醸し出している。
 可愛い。でも可愛いだけじゃない。
 どこか不可思議な感触を抱かせる絵は、作品に更なる味わいを加味している。目立つべき表紙、それを担うに相応しいイラストだと思う。
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