ライトノベル・ファンパーティに寄せて 秋津透
「何か、面白い本はないか?」「この本が面白かった。まあ、とりあえず読んでみな」
昔、まだインターネットも、ライトノベルという言葉もなかった頃、私の周囲にいた本好きたちの間では、こんな会話が頻繁に交わされていました。当時、本に関する情報は比較的少なく、自力で本屋へ行って棚にある実物を見て、あとは友達と情報交換するしかない、という状況だったのです。あの頃に比べると、今では、商業出版されている本なら、インターネットで検索すれば情報が得られますし、更にネット書店で注文して送ってもらうことも、簡単にできるようになりました。便利な時代になったものだ、と思います。
ところが、容易に情報が得られるようになったのに、「何か、面白い本はないか?」という問いは、今でも相変わらず、いや、むしろ切実に発せられているように思えます。情報の量が多すぎて、いちいちチェックしていたら、肝心の読書をする時間も気力もなくなってしまった、という本末転倒な話も聞きます。しかも、情報過多な現代では、昔のように「まあ、とりあえず読んでみな」などと言われても、曖昧な情報が一つ増えるだけ。どうしてこの本が面白いのか、ある程度きちんと説明してもらわないと役に立たない。しかし一方、説明されすぎると、本を読む楽しみが損なわれてしまう。便利になった代償に、現代の本好きたちは、思いもかけない厄介な事態に陥ってしまったような気がします。
私は、本好きの、本好きによる、本好きのための情報提供という「ライトノベル・ファンパーティ」企画は、この厄介な事態を打開する可能性があると感じています。労を惜しまない関係者一同へ敬意を払うとともに、企画の盛り上がりを切に願いたいと思います。
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