「ライトノベル書きのライトノベル読まず」
どうも、桐咲了酒です。
さて、ここは現役作家として、自分なりのライトノベル観やライトノベル読書暦を語るところなんでしょうが……すいません、実はあんまり読んだことないんです。
いや、冗談ではなく本当に。
もともと私は、中高生の頃からミステリや時代、歴史小説、また筒井康隆さんの作品などが好きだったもので、当時のいまでいうライトノベル文庫が、RPG風ファンタジー系中心だったこともあり、あまり食指が伸びませんでした。
さて、そのライトノベル門外漢がなんとなく思うに、ライトノベルとは、主に若年層を対象に、マンガ的文法に則った面白さ、特にマンガの長所である「マンガ的なんでもあり感覚」を取り入れた小説ジャンル、というところでしょうか。
とはいえ、この「マンガだからなんでもあり」にも、諸刃の剣な部分があります。
なんでもありの勢い的な面白みを追求するため、あえてリアリティや整合性を割愛したアバウトな部分や、現実から遊離した設定の馬鹿馬鹿しい側面だけを見て、マンガなんだから適当に描けばいい、のような思い違いをしていては困ります。
というのも、私は以前、まさに「小説とマンガの融合」を謳った場所で書いていました。
私自身、小説と同じぐらいマンガも好きでしたから、小説特有の読み応えとマンガ的な面白みの要素を融合させた作品を書くことは、ひとつの理想でもありました。
ただ末期になって、どうも担当者が「小説にマンガの面白さを取り入れる」方向を見誤ったようで、例えば、当時ブームだった推理コミックの真似を求めるわりに、構成や論理性、意外性など肝心の点を理解できず、トリックなんて推理コミック程度でいい(実際はエピソード単位なら、推理コミックでも中々の良作があるんですが)、表面的な探偵キャラのカッコよさや面白おかしさだけ書けばいい、というスタンスになりました。
で、小説に関しては、十戒レベルの基本はおろか、有名な古典名作、また島田荘司さんや有栖川有栖さんの名前すら知らない、視点統一など小説の基本にも疎いなど……
確かに、小説に比べてのわかりやすさ、読みやすさもマンガの美点ではあるでしょう。しかしそれは、絵物語というメディアの特性からくるものです。物語そのものは小説にも劣らない優れたマンガはたくさんあります。しかしここの場合、マンガの読みやすさを小説に取り入れることを、内容を薄っぺらにすることだと取り違えたようで……
私としては、たとえ十代対象、コミック化前提でも、そんな小説が読者に認められるとは思えなかったので、執筆を遠慮したところ、その場所はまもなく消滅しました。
もっとも私自身も、以降、いわゆるライトノベルに対して偏見ができてしまい、いくつか話はあったものの、気乗りせずにほったらかすことになりました。
まあ、偏見で判断していた私が浅墓だったのは事実でしょうが、近年、読者層の拡大からか、ライトノベルというジャンルが、「マンガ的なんでもあり」を取り入れつつ、小説特有の読み応えがあるものを書ける、非常に面白い小説ジャンルへと成熟してきたように思えます。このあたりは、ある意味ライトノベルの大本であるマンガというジャンルが、その読者層の年齢的成長と共に歩んできた進歩の道に似ているでしょうか。
そんな風に考えて、ようやくやる気を取り戻した今日この頃です。(まあ個人的には、一方で正統派ミステリなんかも書いていければうれしいんですけどね)
と、まあ、近況というか、最近、なにげなく思っていることを書いたら、ずいぶん長くなってしまいましたね。すいません。
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