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冲方丁先生からのメッセージ


 ラノパ委員会と参加される皆様へ 冲方丁

 このたび「このライトノベルがすごい!」が発展し、新たなイベントが繰り広げられることを心からお祝い申し上げます。ライトノベルは、読者の熱意によって今やムーブメントとして盛り上がろうとしています。 「作家がレーベルの垣根を越え始めた」と謳っていた状態をあっという間に通り越し、さらに大きな流れを業界にもたらしました。中でも、「自分はこれが好き」の一言が根拠の全てという動かし難いシンプルさ――それが、小説を一個の健全な商品として見るきっかけになっているのだと思います。 そしてそのきっかけが集合することで、さらに多種多様な作品の出現が促されるでしょう。
 しかし一方で、いまだに根強い「壁」があるのも確かです。
 「ネットで騒がれても売れない。むしろ売れない作品がネットで騒がれることが多い」という決まり文句です。これは何も出版社側が意固地になっているのではありません。現実問題として、厳然とあることなのです。
 けれども「ネットで騒がれる」というニーズが、小規模とはいえ存在するのは確かなのです。いずれ「ネットで騒がれる」という、業界では否定的な決まり文句が、別の状況を作り出すでしょう。 それまで小規模であったニーズが、主流となることなど幾らでもあることですし、事実、ライトノベルはそうして成長してきたのです。その変化は、よく言われるようにネット人口の拡大に伴うニーズの伸長によって起こるかもしれないし、流通の整備による販売の拡大がネットを介したものであることから起こるかもしれません。
 いずれにせよ、そこで問われるのが、伸長するニーズに応える新レーベル作りです。
 そのとき「作家がレーベルの垣根を越える」などという現象を遙かに超えた動きが起こることこそ、読者のニーズへの返答になると僕は思っています。
 すなわち明確な読者のニーズを背景とし、作家と出版社が一体となって、新レーベル形成へのビジョンを持つという動きです。
 これは読者のニーズが、作家と編集者の意識さえも根本的に問い直すきっかけになるということです。現在各レーベルで活躍する作家たちが、やがて「自分の作品だけではなく、そのレーベルそのものの存在意義を、市場を背景として正確に説明出来る」ようにならなければ、そういう動きは生まれません。 ネットを主舞台としたニーズの胎動には、それだけのプレッシャーを作家に与えるものであると僕は思っています。
 それらはやがて、 (1)レーベルを「公共のもの」として見る公有の視点とその教育、 (2)レーベルへの様々な批判を積極的に受け入れて対処する公共努力、 (3)作家個人の力量に全てを委ねるのではなく、その作家の可能性と市場との相性を様々な角度から分析し、プランを立てる商業努力を、作家と出版社側に要求することになるでしょう。
 それらを一から模索して乗り越えたときに初めて、「ブランドとは何か」という理念が、ライトノベル業界を背景にして確立されると信じています。

 ラノパに、そうした業界萌芽のプレッシャーとなれ、というのは作家側の勝手で乱暴な言い分かもしれません。しかしそのための方法は、今、極めてシンプルなものとして読者側の手に委ねられているのです。
 読者のみなさんが「自分はこれが好き」と自信をもって声高に唱えること――それが、業界の全てを変える力になるということを、ライトノベルの歴史は証明し続けてきたのです。


紹介

96年、第1回角川スニーカー大賞金賞を受賞。同年に受賞作「黒い季節」でデビュー。
更に03年にはハヤカワ文庫JA「マルドゥック・スクランブル」で第24回日本SF大賞を受賞する。
他にもマンガ原作・アニメの脚本・ゲームの企画制作にも参加している。

【公式サイト】 「ぶらりずむ黙契録」
<http://www.kh.rim.or.jp/~tow/>



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